パンドラの匣-11
「確かに、人を外見だけで決めつけちゃ、いかんな」
ユイと俺はベッドに寝っ転がっていた。
下手をすると、全く男も知らないように見える彼女は、淫れに淫れていた。
「それ、どういう意味で言ってます?」
「田舎娘が、一体どこで遊んでんだかと思ったんだよ」
「……わたし、男の人とこういう事するの、ユウジさんで二人目ですよ」
「へぇ、じゃあ、一人目とは随分楽しんだんだな」
「フフ、そうなのかもしれませんね」
ユイはさっきの淫れ具合とは裏腹に、今は静かな瞳で天井を見上げている。
「そいつにフラれて、家出したってとこか。悪いことは言わないから帰れよ。すぐに忘れる」
俺はユイの顔を見ずに、柄にもないことを言った。
何かの理由があって家を出たのは、彼女を見た時からなんとなく分かっていた。
だが、彼女の中では、理由は分からないが何かが終わっていた。
彼女は制服を着ているのに、学校などはもう過去のことになっているのだ。
「……その楽しんだ一人目って、どんな人だと思います?」
「さぁな。クラスメートとかじゃないのか」
「だったらいいんですけどね」
彼女は、フッと笑ったようだ。何かを諦めた、どこかで見たような瞳をしていた。
あの瞳は、俺がこの街に来た時の――――
「わたしの、父なんです」
「何!?」
俺は思わず体を起こして、彼女の顔を見つめた。
彼女は静かな落ち着いた顔をしている。冗談を言ってる人間の顔では無かった。
実父と、そんな事があり得るのか……ユイは、静かに話し始めた。