27.星野美夏-1
二回電話しても出ない。もうあの女と一緒にいる頃だろう。電話には出ないか。
ならメールでいいや。
どうしてあの女は良くて、私じゃだめなのか、全く分からない。
そもそも、私と正反対な所がいいなどと、失礼な事を言った彼の事が許せない。
だからと言って彼に不満を押し付けた所で、何も変わらない事は分かっている。
ただ私は彼に、振り向いて欲しいだけなんだ。
とりあえずメールをしよう。今日会いたいと。その一言でいい。メールをしよう。
返信はない。当たり前か。だったら何通だって送ってやる。受信箱がいっぱいになったっていい。送りつけよう。
私とセックスしておいて、私とは付き合えないなんて、ありえない。
しかも久野君の彼女は地味な眼鏡の女。
私では足元にも及ばないような美女ならまだしも、あの女である必要はないだろう。
どうにかして、あの女を痛めつける方法を考えるが、なかなか浮かばない。
まずは久野君にメールを送ろう。
しつこく送っていれば、何か返信があるかもしれない。
世の中はクリスマスムード一色だ。
アパートの窓を開けると、鼻の奥を痛めつけるような冷たい空気が室内に流入する。
通りかかるのはカップルばかり。面白い程みんな、手には四角い紙袋を提げている。プレゼント?うーん、物で満足できるなら、それでもいいんじゃないの。私はそういう安い人間ではないけれど。
私の隣に久野君がいないのはおかしい。
本棚の隅に置いていた小さな鉢植えのサボテンを手に取る。窓から外に放り投げる。
「いて!」と声が上がるとともに、何かが割れる小さな音がした。ざまあみろ。いちゃいちゃしてるからだ。
さて、メールでもするか。