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朝日に落ちる箒星
【大人 恋愛小説】

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15.寿至-1

 塁が帰って来ていると聞いたのは、智樹からの電話でだった。
『今、君枝の家まで送りに行って、一週間は俺の家に泊まるから』
「何で君枝ちゃんの家まで行ってんだよ」
 智樹は電話の向こうでモゴモゴ一人で呟いてから『まぁ一悶着あって、君枝と俺がね』と溜息交じりに言った。
『で、塁も流星群、一緒に見に行くって。時間あるから』
「そうか。それはまた昔のメンツに戻ったみたいでいいや。食事だけ追加してもらっとくから。それよか、その一悶着ってのは何だよ」
 智樹と君枝ちゃんの間に一悶着なんていうのは考えられない事だったので気になった。一悶着を抱えたままで流星群を見に行くというのも何だか気分的に良くない。
『あれだ、俺が星野さん、分かるだろ?あの子と何やかんやあって結局セックスしちゃったんだよ』
 俺は絶句した。電話では伝わらないだろうが、俺の落胆した表情を智樹に見せたかった。あの智樹が。そんな事をするなんて考えられない。信じたくない。
「まじでか」
『まぁ。謝ったけど、どうなるかな。明日の午後、休講だから、その時に部室に来るかどうか、だな』
「そうか。まぁお前の行動は褒められたもんじゃないけど、その何だかんだっていう理由があったんだろ。誤解を解いてさ、また元の二人に戻れよ。とりあえず、塁が帰ってきたら俺に連絡ちょうだいって言っといてよ」
『あぁ分かった』
 電話を切った後、妙な脱力感に襲われた。
 智樹はまだ君枝ちゃんと身体の関係にはなっていないと言っていた。そこへ智樹の「浮気」と呼べるものなのどうかは分からないが、ともかく、あの星野とかいう女とのセックス。君枝ちゃんの傷は深いであろう事は俺にだって分かる。
 塁がいいクッション材になってくれるといいなと思う。俺なんかより絶対に君枝ちゃんの事を分かっているのは塁だ。こんな事を言っていいのか分からないが、塁はいいタイミングで帰って来てくれたなぁなんて考える。
「電話、何だって?」
 キッチンで夕飯を作ってくれていた拓美ちゃんが後ろを振り返り俺に声を掛ける。エプロンの蝶々結びが少し曲がっているのがまた可愛らしい。
「塁が帰って来てるんだって。今度の合宿、一緒に来るんだってよ」
 拓美ちゃんが奇声にも似た声をあげた。酒を飲んだ時以外に、時々こうしてストレスを発散するように奇声を上げる事がある。不思議な子だ。
「それは楽しい合宿になりそうだねぇ」
 智樹と君枝ちゃんの事を話そうか迷ったが、今はやめておいた。もう少しギリギリまで待てば、もしかしたら二人は仲直りをして合宿に来る事ができるかも知れない。


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