おしおきとご褒美と-5
「パパ……気持ちいい、ねえ、もうイッちゃって……マヤの中で、いっぱい出して……」
佐伯の腰の動きが速くなる。呼吸を荒げ、動物のような声をあげながら、折れそうなほど強くマヤの体を抱き締める。願いが聞き届けられたことを感じる。精の放出。佐伯の絶頂。痙攣、そして脱力。
ぬるくなったバスタブの湯の中で、ふたりは顔を見合わせてくすくすと笑いあった。大きな手のひらがマヤの頬についた水滴を拭う。
「ああ、すごいな……マヤの体は。僕がもっと若い時だったら、一晩に10回くらいはヤッてたんじゃないかと思うよ」
「ふふ、そんなに? いくらなんでも死んじゃうわ、わたし」
「ところで、今日は何かあったのかい? 言いたくなければ構わないが、いつもと様子が違うから気になってね」
「ああ……うん、ちょっと疲れていたの。それと……そう、お昼間にあなたの奥さんが教室に来たわ」
「家内が? ふうん……珍しいな、あいつが行くとは。懇談だの面談だのが苦手らしくてね、学校のも塾のも、これまではずっと僕が行っていたんだけどな」
「そうよね、わたし、お会いしたことが無くて誰のお母様かわからなかったもの……タケルくんの進路相談にみえたのよ。芸術方面に進むのは止めて欲しいみたい」
「そういえば家でずっとそんなことを言っていたな。ふん、タケルには大学を卒業する年になったら、そのときに就職できていようがいまいが問答無用で家を叩きだすと伝えてある。男なんだ、それくらいの覚悟があるなら、好きにするといいさ」
「あら、お母様はそうは思っていらっしゃらないみたいよ。大事なひとり息子なのに、って」
「まあ、あれも頑固だからなあ……大事に大事に守って育てたあげく、こんなどうしようもない男に育つ可能性もあるっていうのに」
「どうしようもない? そうかしら、パパはすごく素敵よ。仕事もバリバリ出来て、家庭も円満で、こんなにエッチも上手だわ」
「あはは、そんなふうに言うのはマヤだけだよ。さあ、ベッドに戻ろう。その綺麗な体をもう一度よく見せておくれ」
佐伯は明け方近くまでマヤの体を飽きることなく愛し続け、マヤはあまりの気持ちよさに眠りの世界と行き来しながらそれを受け入れた。ぼんやりとした頭で考える。こうしていられるのはあとどれくらいだろう。マヤのような女にとって、年を取ることほど恐ろしいものはない。やがて乳房が重力に負けて垂れ下り、引き締まった腹に贅肉がのり、肌が衰えてしまったそのとき……きっとすべてを失うことになる。
そうなる前に、なんとかしなくてはいけない。女を売り物にしなくても楽しく生きていけるように……そのためには金が要る。時間はそう多くは残されていない。時期を見て行動を起こさなければ……
ふっ、と口元を緩めて笑う。まだ、今はそのときじゃない。終わりの無い愛撫に身をゆだねながら、マヤは吸い込まれるように眠りに落ちた。