何か・・・足りない-1
葵の体から九条の手が離れると・・・
サァ――――・・・・
と、金色のカーテンのような光が葵を包み・・・葵の背には美しい銀色にも金色にも似た翼がカタチとなっていく・・・・。
わずかに葵の唇が動いて、聞き取れはしなかったものの、確かに愛しい王たちの名を口にしていたのをエデンは見ていた・・・・。
翼が完全に出現すると、光のカーテンは一瞬のまに世界へと広がっていった。
(・・・アオイ、良い朝だよ・・・起きて?)
(・・・ュリ・・・・?ぃや・・・、・・・リオのいない世界なんて・・・目を覚ましたくない・・・・っ・・・・)
(・・・ずっと傍にいるよ・・・必ずアオイを見つけるから・・・・怖がらないで、目をあけて・・・・)
懐かしく、切ない甘い声に、
葵は薄く目をあけて、周りを見渡した。
「おかえり、葵・・・・
この後、お前に伝えたいことがある」
その声の主に目を向けると、葵は驚きに目を見開いた。
「・・・・九条?みんなも・・・・」
きょろきょろと見慣れた玉座の間を見渡す。(・・・私どうしたんだっけ・・・)
九条が進み出て、葵の手の甲へ唇を押し当てた。これは神官が王へと忠誠を誓う儀式のようなものだ。
「転生お疲れ様でした。
・・・私たち神官も、民たちも葵様の帰還をずっと待っておりました・・・こうして再会できた、これ以上の幸せはございません・・・っ・・・」
零れ落ちる涙もそのままに、仙水は葵の手の甲へ恭しく口付けを落とした。涙が葵の指先に触れる。
(・・・涙?)
葵は指先を眺め、仙水の瞳からこぼれ落ちた涙をみつめていた。
「・・・久しぶりだな葵
・・・ずっと待っていた・・・ずっと・・・・」
以前と変わらぬ姿のままの葵を目の前にして、大和は胸がいっぱいでうまく言葉が出てこない・・・、伝えたいことはたくさんあるのに、今すぐ彼女を抱きしめたいのに・・・
「ありがとう・・・大和、ただいま」
「・・・・・っっ」
大和は目頭を熱くして、そのまま葵の手の甲へとキスして離れた。
「ったく・・・
心配かけやがって・・・俺からもう離れるなよ!!」
蒼牙が憎まれ口を叩くのも、彼の愛情表現だと知っている葵は胸があたたかくなった。
手の甲へちゅっと可愛い音をたてて蒼牙が吸いついた。