王の帰還2-1
エデンは九条と大和が差し伸べる腕にアオイをゆだねた。絹糸のような艶やかな髪がエデンの手のひらにをさらりとかすめた・・・。
九条は愛おしそうに葵を抱きしめると彼女の髪に頬をよせた。葵を抱きしめる腕はわずかに震え、目を細め愛しげに見つめる九条のまなざしは過去にも未来にも葵しか見えていないかのような・・・そんな目をしている。
「エデン殿、よく葵様をお連れくださいました・・・っ、この瞬間をどれほど待ちわびたことか・・・っ・・・・・」
「仙水!!泣いてんじゃねぇよ!!
やっと・・・、やっと葵が帰ってきたんだ・・・もうっ絶対別れるのはいやだ・・・俺達が護ってやらなきゃっ!!!」
蒼牙は未だに葵に触らせてもらえない。それというもの、九条が葵に触らせてくれないからだ。
エデンは葵の様子をうかがっていた。今は向こうの世界で見せたような翼の輝きは落ち着いて、生前の葵の翼のように淡く光輝いている。
(目覚めたとき・・・葵はアオイの記憶を手放してしまうのだろうか・・・)
喜ぶ神官たちを目の前にして、エデンはひとり切ない痛みを胸にかかえていた。
「・・・エデン殿?あちらの方々とは、うまく話がすすんだのでしょうか?まさかこんなに早く・・・」
顔を覗きこむ仙水の声に目を向けると、
「いずれの王もアオイを手放そうとはしなかった・・・。人界へ戻ることを決めたのはアオイの独断だ・・・胸が張り裂けそうなほどにつらい別れだったよ・・・・・」
力なく肩を落とすエデンは自分でも不思議なくらいダメージが大きいようだ。
「・・・そうでしたか。
エデン殿にも・・・お辛い想いをさせてしまいましたね」
「俺はアオイやあいつらに比べたらどうってことないさ・・・」
先を歩く九条は玉座の間へと入って行った。葵が人界の王として君臨するには玉座につき、王の証である翼と、神杖を召喚し、その力を人界へ行きわたらせなくてはならない。このような状態の葵には酷なことかもしれないが、人界は急速に弱まっており、民たちの不安も大きい。
「・・・九条、いくらなんでも早すぎないか?」
「・・・葵ならば真っ先にこうするはずだ」
大和が頷くことも否定することも出来ずにいる間に、九条は葵を玉座へ座らせた。