王の帰還-1
(皆・・・ごめんね・・・・。
カイ・・・黙っていなくなってごめんなさい・・・キュリオ・・・エクシス・・・・・ティー・・・・ダ様・・・だいす・・・き・・・・・
わすれ・・・たく・・・・な・・・・・・い)
(・・・キュリ・・・・オ・・・・・・)
意識が薄れるなかで、アオイは愛しい者たちの名前を繰り返し呼び続けた。願わくば、目を覚ましたその時に・・・どうかこの愛を忘れていないようにと・・・
エデンはアオイを抱えなおし、涙に濡れたその頬を衣の袖で優しくぬぐった。そして、音なく一歩後ずさるマダラ。
「しばらく俺はアオイの傍で様子を見る・・・心配するな」
「・・・そうしてくれ」
ゆっくり翼を広げたエデンがマダラの城を飛び立った。気を失っているはずのアオイの手に力がこもり、閉じている瞳から涙がこぼれた。
雪のように降り注ぐ羽は輝きを増して、愛する王と人々を優しく包んだ。
最後にアオイが消えたその場所から動くことが出来ずにいたキュリオ、エクシス、ティーダは手のひらに舞い降りた羽を握りしめ・・・涙をながした。
(アオイ・・・お前はもう過去の人界の王、葵じゃない。このつらさを乗り越えるんだ・・・・お前の未来のために・・・・・)
強くアオイを抱きしめて人界への回路をエデンは進んだ。
この先にある未来は光か闇か・・・・
確かなものなど何もない。また人界の王として孤独な道を行くかもしれないのだ。
エデンとアオイが回路を抜けると、雪のように舞っていた羽はやがて・・・消えた。それはアオイがもうこの世界にいないことを意味していた。
――――――・・・・
人界の上空へ差し掛かると、心なしか雲が薄い気がする。エデンはあたりを見渡すと、百年近く鳴りやまなかった雷鳴や、嵐の影がないことにきがつく。
王宮が眼下にせまり、急降下すると・・・。
そこには九条をはじめ、仙水や大和、蒼牙や他の神官たちの姿があった。
九条や大和は大きく手を伸ばし、葵を受け取ろうとしている。その表情は・・・永遠の恋人との再会を待ち望んだ男の顔をしていた。
仙水は涙を浮かべて両手を胸の前で組んでいる。親心にも似た、慈愛に満ちたまなざしをむけて・・・。
蒼牙は待ちきれないのか、せわしなく走りまわっていた。