悲しみを胸に・・・-1
マダラもエデンも目を閉じて、目の前のあまりの悲劇に耐えようとしていた。
人としての幸せが許されぬ人界の王。彼女がこの世界に命を受け、束の間の幸せを得たのはなぜか・・・。夢を見せて取り上げてしまうのは、あまりに残酷ではないのか・・・?
「なぜ・・・アオイがこんな・・・・」
マダラはアオイに近づいてその小さな体を抱きしめた。
アオイはマダラにすがるように声を上げて泣いた。
「・・・ぅぁぁあぁああああああああっ!!」
アオイは頭を押さえ、耳を塞ぎ・・・声の限り泣き叫んだ。マダラの腕に力がこもる。
「アオイ・・・よく聞いて欲しい。
わずかな望みがあるかもしれないんだ」
首をふって激しく否定し、アオイはマダラの体を押しのけた。
「もう・・・っいやなの・・・っ!!!!・・・何も考えたくない・・・っ!!!いやぁあああああぁっ!!!!」
「マダラ・・・ッ!!
これ以上アオイをここに置いておくのは危険だ!!心が壊れるぞ・・・っ!!」
「アオイ・・・・」
泣き叫び、心の痛みに己を見失いつつあるアオイの頬に手を添えた。そして・・・その震える唇にマダラは自分の唇を重ねた。
「マダラ・・・お前・・・」
「・・・な・・・にを・・・・・っ」
突然のことにアオイはわずかに自我を取り戻した。普段の彼女ならば真っ赤になって大慌てするだろうが、今はショックを受けた顔をしている。
しばらくすると、また心の痛みに顔を歪め・・・アオイの頬を大粒の涙がこぼれおちた。
「お前が見たこの世界は、夢なんかじゃない・・・確かに存在した愛を忘れないでほしい」
「人界の王の運命を・・・
お前がその手で変えてやれ・・・・」
「・・・・・私が・・・?」
「俺たちは絶対にお前を忘れない。だから・・・どうかお前も忘れないでほしい・・・」
「・・・忘れたくない・・・
私の・・・大好きなひとたち・・・・」
アオイは崩れるように前のめりに倒れた。その体をエデンが受け止める。
「・・・アオイが目を覚ます前に人界へ連れて行く」
「・・・あぁ」
マダラは名残惜しそうにアオイの頬へ顔を寄せた。(きっと、アオイなら・・・運命を変えられるはずだ・・・)