残すもの、残される者-1
しばらくして部屋に戻ったキュリオはアオイの姿をみてほっと気持ちを落ち着けた。
「エデンとマダラはどうした?」
「一度国に戻ると先程出て行かれました」
「・・・そうか」
窓の外に目をむけても二人の姿はすでに見えなかった。
「ね、キュリオ・・・、キュリオのハープをきかせて?」
穏やかに笑うアオイを見つめて・・・キュリオは頷き立ちあがった。ふたりでテラスに出向き、キュリオのハープの音色が風にのって美しく響いた・・・・。時折、アオイの姿を確認しながら。
エクシスは中庭の噴水の傍へ腰かけていた。キュリオのハープの音色がその耳にも届いた。
『・・・アオイが初めてハープを奏でて見せたのはここだったな・・・』
愛らしく笑うアオイを思い出して目を細めた。夢の中で慌てる彼女の姿も、腕の中で赤くなるその愛しい表情も・・・すべてがエクシスの心に響き、わずかな嫉妬させもその身を焦がした。
「エクシス」
そう呼ばれて振り向くと・・・愛してやまない彼女の姿があった。
『・・・アオイ・・・』
(・・・昨晩、アオイにひどいことを言ってしまったな・・・彼女は許してくれるだろうか)
アオイはもぞもぞと何かを探している。
「あ、あったっ!!」
我の目の前に手を伸ばして、あの石を渡そうとしている。
「エクシスにあげるって言ってたのに渡すタイミング逃しちゃってたね・・・」
石を受け取り、アオイの顔をみつめた。穏やかにアオイは微笑んでいた。
『・・・アオイ昨日はすまなかった・・・我はお前のことになると加減がわからぬのだ・・・』
「ううん、ありがとうエクシス・・・」
ティーダは幼いアオイの姿をみた、あの小川に来ていた。黒鳥となり、初めて彼女に接近したあの日。アオイは心美しく育ち、いつしかティーダは彼女しか見えなくなっていた。
(まさか・・・人界の王だとは・・・)
ため息をつき、ひとりで歩くその先にアオイの姿を見つけティーダは駆け寄った。
「アオイ!!」
俺の声に振り返ったアオイは自分の胸元を指さした。