儚い夢-1
「それは・・・アオイの意志か」
エデンは戸惑ったように足元を見つめた。彼女にとってこの世界は生まれ故郷であり、愛しい想いのすべてがここにある。
「あぁ・・・彼女が決めたことだ」
やっと彼女を理解し始めたマダラにとって、この別れは今までに経験したことのないつらいものとなるだろう。
「・・・・お前はいいのか」
そう問われてマダラはエデンを振り返った。
「・・・・なぜ私の心配をする」
「キュリオやエクシス、ティーダも相当なものだが・・・・今のお前はあいつらと同じ目をしているぞ」
「伝えたいことがあるなら今のうちだ・・・・彼女が人界へ帰れば永遠の別れになる」
「・・・・・」
「なぜ彼女はこの世界に生を受けたのだろうな・・・・」
「私は何のためにこの世界に生まれたの・・・・?」
アオイから離れた場所でマダラがそう口にしたとき、彼女も似たような言葉を口にしていた。
「どうしてこんなに残酷で幸せな夢を見せるの・・・・」
両手で顔を覆ってアオイは泣いていた。
「・・・・っ!!夢なんかじゃないっ!!
お前も・・・俺達もちゃんとここにいるだろ・・・?」
ティーダはアオイに向かって声をあげた。胸がしめつけられ、やっとのことで声を振り絞る・・・。
わずかに顔をあげたアオイの瞳がティーダを捉える。
「・・・・ティーダさ・・・ま?」
おぼろげに見つめるその目は少しずつ正気を取り戻していく。傍らにひざまずくエクシスと、自分を抱きしめているキュリオに驚くアオイ。
「あの・・・ご、ごめんなさい・・・私おかしなこと言ってましたか・・・?」
足取り重く戻ってきたエデンとマダラは正気に戻ったアオイを見てキュリオたちと城へ戻るよう促した。
立ちあがろうとするアオイを制止し、キュリオがそのままアオイを抱き上げ歩き出した。
キュリオの胸元に顔を寄せながらアオイは見慣れた悠久の地を眺めていた。幼い頃、キュリオやカイと遊びにきていた場所や木の実を女官たちと採りに来ていた場所もある。懐かしさに目を細めていると、知らずに涙があふれた・・・。