遠い未来のために・・・2-1
「・・・・・葵?」
九条が葵の座っていた玉座を見やった。
一瞬、かつての彼女が・・・いや、夢の中で出会った転生後の葵が微笑む姿が見えた気がした。
見たことのない異国のドレスを身にまとい、背中の翼は金色にも似た輝きを放ったアオイが地に伏していた。
「・・・っ!!
・・・アオイ・・・ッ!!」
キュリオが血相を変えてアオイを抱きかかえた。優しく頬をなでるとアオイがゆっくり目をあける。
「・・・・アオイ、私がわかるか・・・?」
「・・・・・」
言葉なく宙を見つめるアオイは、静かに口を開いた。
「帰らなきゃ・・・・
私を待っている人がいる・・・」
視点が定まらないままアオイは手を伸ばした。ここにいるはずのない人界の神官たちの姿が見える。
「九条・・・仙・・水・・・やまと・・そう・・・が・・そして・・・人界の優しいひとたち・・・・」
『・・・・っっ』
エクシスは辛そうに顔を歪め、アオイの手を握った。
『・・・思い出すな・・・
我の立ち入れぬ世界などに・・・お前を帰したくはない・・・』
迫り来る別れのときを予感して・・・エクシスは握る手に力を込め・・・うつむいた。
エクシスに握られた左手に視線を落とし、キュリオに抱きしめられている肩にアオイは指先で触れた。そして独り言のようにつぶやく。
「・・・・帰らなきゃいけないのに・・・・
このぬくもりを・・・失いたくない・・・・」
彼女の瞳から大粒の涙がこぼれ落ち、その涙は・・・アオイが彼らに抱いている愛情の深さだとわかる。
「・・・・・」
「・・・・エデン、話がある」
本来、アオイが自分でエデンに話す予定だったが・・・葵としての意識が覚醒してしまった今ではそれも難しい。
マダラはエデンと共にその場を離れた。心配そうに彼女から目を離せないでいるエデンの腕を引きながら・・・・。
「どうした、マダラ」
「そなたに頼みたいことがある」
訝しげにマダラを見つめるエデンは頼みの内容を聞こうとした。
「・・・・アオイを人界へ送り届けて欲しい」
驚きに目を見開くエデンは、口を開けずにいた・・・・。