遠い未来のために・・・-1
「これ・・・私の心、になるのかな?
人界の王のあなたの羽には全然叶わないけど・・・」
アオイはにかみながら、出現してまもない自分の羽のひとつを彼女に手渡した。
『・・・・ありがとう・・・・貴方の羽とても綺麗ね・・・・』
もう一人の私は、私の羽に頬を寄せると静かに涙を流した。
「・・・私、きっと忘れない・・・大切な人達のことも、あなたに逢えたことも」
『・・・ありがとう、そして思い出して・・・他にも貴方を待っている大切な人がいることを・・・愛した世界と神官たちのことを・・・』
「愛した世界・・・神官・・・・・」
もう一人の私が優しい笑顔でそう口にしたとき・・・互いが手にした羽が輝いて光があたりを包み、見慣れた水辺へとゆっくり意識が引き戻されていった・・・。
(・・・過去であり未来の私・・・?)
水に浸していた手の平をすくい上げると、真っ白な羽がその手に握られている。
「・・・もうひとりの私の心・・・愛した世界と神官・・・・・」
と、そのとき。
羽はアオイの手から離れ、光となってはじけてしまった。驚いてその残像を握りしめようと手を伸ばすと光はアオイを優しく包んだ。
走馬灯のように浮かんでは消える・・・悲しく、懐かしい風景。それと、甘く切ない優しい姿と声・・・。
そして・・・・力及ばず手放した己の命・・・・・
「・・・・・っっ!!!」
あまりの衝撃にアオイは立ちあがることが出来ず地面に倒れ込んだ。そんなアオイの姿とは真逆に、背中の翼はまばゆく光り輝き・・・・・完全なる王の目覚めを歓喜していた・・・・
悠久の城がビリビリと音を立てて強い波動に振動している。
「・・・なんだこの力は!!」
家臣や女官が柱や手すりにつかまり、その激震に耐えている。
「・・・まさか・・・」
アオイとの待ち合わせの場所へ向かおうとしていたマダラとエデンは視線を絡ませた。
ふたりが城を飛び出す前にキュリオとエクシスが走り出した。続いてマダラとエデン、ティーダがそのあとを追う。
この明るい陽射しの中、さらに輝く一点を目指して走る。
「アオイ・・・!!!」