私と私の心-1
食事が終わり広間をあとにしたアオイはため息をついた。マダラの部屋で共に夜を明かしたことがバレてしまい、何もなかったことを皆に説明するのは至難の業だった・・・。
とぼとぼ水辺の傍を歩いて、このあと落ち合うことになっているエデンとマダラの姿を探した。
おもむろに水辺にうつる自分の姿に目を向け、はっとした。
(・・・・え?)
水にうつるアオイは頭に花冠をのせて、穏やかな微笑みをたたえている。そのとき、自分のものなのか、水の中にうつるもう一人の私のものなのかわからない真っ白な羽が水辺に浮き上がった・・・。
アオイともうひとりの自分は鏡のようにその羽に手を伸ばす。
指先が触れた瞬間・・・・・
ぐっと視界に広がる、ここではない世界・・・傍に見えるのは美しく優しい光を放つ王宮と・・・一面に咲き誇る愛らしい花々たち。
空には零れ落ちそうなほど数多の輝く星がきらめている。
アオイは目を閉じ、優しく吹き抜ける風を体全体で感じた。そして肌に感じる懐かしさ。
(・・・・この空も大地も・・・愛しくてたまらない・・・・)
アオイの頬を一筋の涙がこぼれ落ちた。
人の気配にゆっくり目を開けると・・・・・
先程みた、花冠を頭にのせた自分とそっくりな少女が目の前で微笑んでいた。
「・・・貴方はだれ・・・?」
『わたしは・・・
過去の貴方であり・・・未来の貴方』
「そっか・・・やっぱり私は元の世界に戻る運命なんだね・・・」
もう一度周りを見渡して・・・キュリオたちと過ごすあの世界ではないことを確認した。諦めにも似た悲しさが心に影を落とす・・・。
『今の貴方は・・・使命と"もうひとつ"を両立出来ないと考えているのね』
「・・・方法があるなら教えて欲しいよ」
うつむいた私の頬を、もうひとりの私は優しくなでた。
『きっと貴方は忘れない・・・時を越えて、世界を越えて・・・いつか必ず・・・・・』
もう一人の私が先程水辺でみた、真っ白な羽を私に差し出した。
『これは貴方の、もうひとつ心・・・』
「綺麗だね、ありがとう」
そしてアオイもあわてて自分の羽をひとつ抜いてもう一人の私に差し出した。