「捨て猫」-1
『あそこの奥さんは頭がオカシイらしい。なんでも、毎日自分の夫に似た人形に話し掛けているらしいのだ…』
あたしは捨てられた猫みたい。
ご主人に捨てられて、もう行き場がない。ただただ泣いて、来もしない誰かをまってる。
心のどこかで、あなたが戻って来るんじゃないかって、期待してる。
こうしてずっと泣いてれば、あなたが戻ってきてくれるんじゃないかって。
でもあなたは戻って来ない。あなたはもう、他の女に夢中だから。
私は悲しみで今にも壊れそうなのに、あなたはそれに気付かない。あたしを見ていない証拠。
もうこんな思いは嫌。悲しみはもう十分。
でも、まだあたしは、たまらなくあなたが愛しい。
彼は二週間ぶりに家に戻ってきて、やっとあたしを見てくれた。
あたしはそんなにひどい顔をしてたのかしら?彼が泣きながらあたしを抱きしめた。
『あぁ、キャシー…こんなになってしまって…。今までごめん。これからはちゃんと君だけを愛し続けるから…。僕を許して…』
とても、嬉しかった。
でもね、あたしはもう壊れちゃったみたい。
私は彼の後ろに回り込むと用意していたライフルでズドン。彼の頭からは赤黒い血が。
彼は、息を引き取る前に『愛してる』ってあたしに言った。
私からは、相変わらず涙が流れ出てる。
でも、これでもうあなたは私だけのものよね?
これからはずっと、一緒よね?
『あそこの奥さんは頭がオカシイらしい。なんでも、毎日自分の夫に似た人形に話し掛けているらしいのだ…。』
-END-