ビーマイベイベー!-8
さらに数日が経ち、男としての生活が少々板につき始めた頃、衝撃的な話がわたしの耳に飛び込んできた。
なんと、わたしの評判がすこぶるいいのである。
いや、正確に言うと、わたしを演ずるシノブの評判がいいのだ。
『最近、トウコの奴、なんかやけに女っぽくなったっていうか』
『あいつすげーうるさい女だったけど、大人しくしてたら結構可愛いんだよな』
『気のせいか、頭までよさそうに見えるんだよ。俺、告白しちゃおうかな』
『トウコちゃん、物静かになっちゃったけど、変に頼り甲斐あるのよね』
『こないだ真剣に色々と相談にのってくれたの。前は茶化されてばかりだったのに』
なんだこれ。なんだなんだなんだ。
こらこらこらこら。そこの女は、中身は男なんだぞ。あんたら、アホなの?
馴れ馴れしい男子が、シノブ、お前もそう思うだろう? などと同意を求めてくる。
はぁ。わたしは、曖昧に返事をした。
シノブの席(というかわたしの席だったんだが)は、前の方にあった。
そこで、シノブが行儀よく次の授業の準備をしていた。
わたしは制服も着崩したりしていたが、シノブはきっちり制服を着ている。
あれ、わたしってこんな可愛かったっけ。
いつも友人とくっちゃべっては、だらしない顔で下品に笑っていたような気がする。
わたしが見るわたしは、おしとやかな淑女だった。
淑女というか、ただ無口なだけなのだが、責任感や正義感は強い男ではあった。
そういう性格が、受けているのだろうか。
わたしは、いくらか悔しい気分になってきた。何故、男のシノブがモテるのか。
と同時に、不安な気持ちも芽生えた。彼はわたしのどこを気に入ってくれたのだろう。
わたしが告白したから、仕方なく付き合ってくれていたのだろうか。
万が一にも、誰かにシノブが奪られるような事になったら……
いくらなんでもシノブは男である。
体は女でも、男が男に、なんてさすがにないはずだ。まさかな、まさか。
そんな事を思いつつ、放課後。