精霊達の談笑-1
『最近、どうよ?王子様の様子は?』
赤い火竜が器用に林檎を4等分に分ける。
『ああ、大分しっかりして来たよ。やっぱり過去に跳んだのが良い経験になったよね』
分けられた林檎を脚で受け取った派手な鷲は、それをついばんで答えた。
『凄いよね。過去に跳んで無事に戻っただけでも驚きなのに、現代で恋人の精霊に会えるなんてさ』
白いイルカは興奮気味に林檎を丸飲みにする。
『びっくりしたわよ〜久しぶりに召喚師と仮契約してみたら王子様が居るんだもの』
飛び魚が林檎を小さくかじりとってシャクシャクと咀嚼した。
『聞いたよ?召喚師に妬きもち妬いたって?』
火竜はがぶりと林檎にかぶりついて甘い果汁を楽しむ。
『だって……裸で抱き合ってるんだもの……』
飛び魚の答えにイルカが咳き込み、火竜は大爆笑、鷲は首を横に振ってため息をついた。
『私はあの子達の子孫をずっと見守って来たのよ?やっと会えたと思ったら……軽薄王子は嘘じゃ無かったのね』
『いやいや、黒の魔導師がその場に居たんだから、ちょっと慰めてただけじゃね?』
黒の魔導師がそんな事を黙って見ていたのならワケがあるハズだ、と火竜は腹を抱えながら王子様をフォローする。
『そうかしら?』
『そうだよ。君に出会えて彼女の事を鮮明に思い出したからね。僕らにとってはそんなに昔の話じゃないからさ』
鷲も自分のパートナーを庇った。
『それはそうと、君達は完全共有しないの?』
話題を変えた鷲に問いかけられ、火竜とイルカは顔を見合わせる。
『僕の方はまだかかりそうかな〜?』
意識共有に問題は無いが魔法について素人すぎる、とイルカは前ヒレでポリポリと脇腹辺りを掻く。
『僕の方は出来ると思うんだけどさ……』
火竜は困った顔で言いよどみ、他の精霊は首を傾げて続きを待つ。
『……完全共有後の姿が……怖いっていうか……』
まだやった事はないが火竜と人間の合体など、どう転んでも魔物にしかならないと思う。
言われた他の精霊達は火竜と人間の合体した姿を想像した。
火竜の体に頭が人間とか……人間の体に頭が火竜で尻尾がついてたりとか……確かに、見た感じ……怖い。
『いやね、パートナーが筋肉隆々のごっついタイプなら有りかなとは思うんだけどさ……どっちかって言うと癒し系?』
火竜のパートナーは間延びした喋りに童顔の男……リザードマン擬きの外見は、はっきり言って似合わない。
『そ…そうだね……』
イルカは自分の想像に身震いする。