蘇る記憶-1
水の音に意識を戻され、ゆっくり目を開いたアオイの視界に入ってきたのは見慣れない中庭のような景色だった。
起き上がるアオイの足元に肌掛けが滑り落ちた。慌てて拾い上げると、それには青い布地に金色の刺繍がほどこされているのがわかった。
綺麗な肌掛けをじっと見ていると、すぐそばから懐かしいような・・・切ないような声がした。
「悲しいよ葵・・・膝を貸していた私より、そちらに興味を惹かれたのか?」
「また私ったら・・・ごめんなさい、九条・・・」
(私・・・、この人のことよく知ってる)
気落ちしたように眉を下げる少女に漆黒の彼は小さく笑った。
「さぁ、目覚めのキスを・・・」
伸ばされた手は葵の肩を抱き、彼の唇が瞼へ優しく触れた。
「・・・ありがと・・・」
「ねぇ・・・私、どのくらい眠っていた?」
「私が見つけた時、葵はすでに眠っていたよ」
愛おしそうに九条の手が私の頬をなでる。
その眼差しがどこか悲しく、胸がきゅっとなる。
「・・・そっか、膝枕ありがとう」
「・・・・・」
何かが心に引っ掛かり、はっきりしない気持ちを抱えた葵に九条が顔を寄せる。
「葵・・・早く目を覚まして・・・・私の元に帰ってきてくれ」
「え・・・?何言って・・・・・」
「私ちゃんと起きて・・・」と言いかけたとき、ガラスを叩くような音がした。
はっとした二人が後ろを振り向くと、忘れもしない・・・異世界の美しいふたりの王の姿があった。
「・・・キュリオ・・・・エクシス・・・・」
思わず駆け寄ろうとする葵の手を九条が掴んだ。九条は憎悪にまみれた瞳で王たちを睨んでいる。
「九条・・・」
九条の表情に悲しくなる葵だが、キュリオとエクシスの元に飛び込みたい気持ちがやはり抑えられない。
向こう側にいるキュリオとエクシスは見えない壁を破壊しようと神剣と神弓を手にしていた。
「あれがキュリオとエクシス・・・・
・・・・実に不愉快だっ!!!」
九条の手から彼の剣がまばゆい光を放ち召喚された。それは彼にしか扱うことが許されていない、彼が葵を守るために与えられた聖剣だった。