女王様の命令は絶対です <後編>-3
「襲われたと言っても…… まぁ未遂なのですが…………」
「み、未遂だからって……」
「…………はい 幸い身体に傷は負わなかったものの…… トラウマというヤツでしょうか?」
「それで男の人が…………」
突然のユイの告白に頭が真っ白になる私。
ドラマや小説では見聞きしたこともあるけれど、
実際にそういう経験をした子がこんなにも身近にいたなんて……
「じゃぁひょっとしてユイちゃんは…… もとから同性愛者というわけじゃなくて?」
「そうですね…… どちらかと言うと男性恐怖症でしょうか?」
少しずつ、ユイの過去が紐解けるたび胸が締め付けられる。
一番近しいそれでいて一番信頼の置けるはずの男性に襲われたのだから、
心に深い傷を負うと共に、男性を恐れてしまうようになるのも無理はない。
「しばらくは………… まったくと言っていいほど男の人と会話が出来ませんでした」
「…………うん」
「少しずつ、ホントに少しずつですけど慣れる事からはじめ、なんとか学校には行けるようになったのですが………… 思春期に入って本来向けられるべき異性への思いは芽生えず、気がつくと同性ばかりに心を寄せるようになっていたんです…………」
「そう…… だったんだ…………」
多くは語らず、けれどその核心を淡々とした口調で私に語りかけるユイ。
私はその言葉に黙って耳を傾けるも、
ずっとひとり耐えてきたユイを思うや次第に目頭が熱くなり、
思わずその小さな背中に顔を埋めては、声を殺して泣いてしまっていた。
「ね、姉様? そんなに深刻にならずとも大丈夫ですよ?」
「ぐす…… そ、そんな事言われても…………」
「あは、すみません。ちょっと重すぎましたかね?」
「ううん、ごめんね? そんな辛いこと………… 言わせちゃって…………」
私が泣いた所でどうにかなる事では無い。
けれど考えれば考えるほど、その辛さが胸に込み上げ涙が止まらない。
「ただ隆は………… 隆だけはなんか違ったんです」
「ぐす…… 違った?」
「はい♪ 異性なのに異性を感じさせないと言うか…………」
「異性を…… 感じさせない?」
「上手く言えませんが…… 少なくとも身体ばかり求めてくるような輩ではありませんでした」