想い、隠して-1
アオイの柔らかな頬に触れたマダラは彼女の肩を優しく抱き寄せた。
「・・・朝が来たらエデンにも伝えよう」
「はい・・・」
「・・・・・」
マダラはアオイを抱きかかえベッドへ運んだ。驚くアオイが上体を起こそうとすると・・・
「・・・部屋へ戻る途中、だれかと顔を合せるのも辛かろう・・・」
マダラはそう言ってアオイの前髪を優しく梳いた。冷たい彼の指先が心地よく、荒れていた心までも癒されていくような不思議な感覚がアオイを満たした。
「ありがとうございます・・・マダラ様の願いがあったら・・・どうか私に叶えさせてくださいね。出来る事なんてそんなにないですけど・・・」
「・・・あぁ、考えておこう・・・」
目を閉じたアオイを見届けて、マダラが立ちあがろうとすると何かに引っかかったように裾に違和感を感じた。
「・・・・・」
アオイの手がマダラの服を掴んでいた。しばらく考えた末そのまま彼はアオイの眠る隣に移動し、頬杖をつきながら体を横たえた。
(この少女が・・・アオイが人界へ帰ったらそれですべて終わる・・・?人界はそれで元通りかもしれぬ・・・だが、この世界はどうなる?残された者たちは・・・・・)
「・・・・んっ」
鼻を鳴らすような声をもらしたアオイの目尻に涙が浮かぶ。苦しい決断をせざるを得なかった彼女の心の負担はどれほどのものか・・・
マダラはアオイの涙を指先でぬぐい、瞼へそっと唇を寄せた。
無意識なのかアオイはマダラの胸元にしがみつき、頬を寄せた。本当はここから離れたくないのだと彼女は全身で叫んでいるようにマダラには見えた。
「・・・そなたがこの世界に生を受けた意味を、こうして出会えた奇跡を信じよう・・・」
眠りに落ちていくアオイの耳に優しいマダラの言葉が響いた。
『いつか・・・必ず・・・・』