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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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決断-1

寂しさと苦しさを抱えたアオイは城内の階段をかけあがり、ひとりの王にあてがわれた部屋の前へと来ていた。






こんな夜分遅くの訪問に眠りを妨害するなどあってはいけないと思いながらも、アオイは扉をノックしようと右手をあげた。






(・・・やっぱり明日にしよう・・・でも、朝になったら皆さんがまた顔を合せることになってしまう)





何度かの葛藤の末、あきらめて引き返そうとしたアオイに扉の内側から声がかかった。






「何をしている・・・用があるなら入ればよい」






「・・・っ!!」








「申し訳ありません、マダラ様・・・」








そう言って扉をあけるとベッドに横になったままの無防備なマダラが長い髪をかきあげ、うつろな瞳をこちらへ向けていた。






儚げな美しい色気をまとうマダラのすべてがとても綺麗で、灰色の髪は月の光に反射して銀色にも見える。





瞬きもせずアオイを見つめるマダラは静かに口を開いた。






「・・・・夜這いを仕掛けるつもりなら・・・もっと積極的になるべきだな」






起き上がる気配もなくマダラはアオイを手招きした。





「・・・はい、申し訳ありません」






マダラを見上げるようにアオイは絨毯へと腰をおろした。






「・・・・・」






なぜそんなところに座る必要のか・・・と、マダラは思ったが、そのことは口にしなかった。






「遅くにごめんなさい・・・
どうしてもマダラ様にお願いがあって・・・」






「・・・・・言ってみろ」






不安な色を宿した瞳を一度閉じ、再び目を開いたアオイの目には強い意志を感じた。







「・・・マダラ様」







アオイはマダラにしか叶えられない、ひとつの願い事を頼んだ。







アオイの願いを聞いたあとマダラは小さく息を吐き出した。






「・・・・本当に後悔しないか」






黙って頷くアオイはマダラへ深く頭を下げた。






ドレスの裾を握る彼女の手は震え、涙を流さぬよう懸命に耐えているアオイの頬にマダラは手を伸ばした。






女を慰める方法などマダラは知らない。
・・・ただ、彼女自身が願う幸せをすべて諦めさせた王という十字架が憎く思えた・・・・・






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