約束-1
人の時間でいうならば、すでに深夜の時間帯だった。
エデンの姿を追ってアオイは城の入口まで迎えにでた。
「エデン様、お帰りなさいませ」
「・・・ああ、まだ起きていたのか」
「はい・・・部屋を用意しておりますので、どうぞ」
「・・・・・」
浮かない顔をしたアオイを横目で見ながらエデンは城内へと歩みを進めた。
「九条・・・仙水、蒼牙、大和・・・・聞き覚えは・・・あるな?」
びくっと体を震わせアオイは立ち止まった。
アオイの脳裏をよぎる、懐かしい笑顔と・・・・そして、寂しそうな瞳。
一瞬の出来事にアオイの思考回路は停止した。淡く輝いた王の証。反応している翼をみてエデンはこのまま先を話すべきか迷っていた。
(その先を話せばアオイは葵を思い出す可能性が高い。しかしそれはこの世界にいる時間を縮めることになる・・・・)
「エデン様・・・その名は・・・・・」
「お前を待っている者たちの名前だ」
エデンはそれ以上語らず、案内された部屋へと入って行った。
「くじょう・・・せんすい・・・・そうが、やまと・・・・・」
まじないのように呟くアオイは、記憶の糸をたぐるように目を閉じた。
美しい悠久の地を花びらと花の香りが風にのって舞っている。穏やかな月夜の中、以前にも似たようなことがあったと思考をめぐらせる。
『葵・・・いつかこの命が尽きても必ず俺はお前を探しだし、お前の元に戻ろう』
『心配いらないよ。
九条は死なせないし、私もどこにも行かないから』
微笑みあうふたりだが、彼の言葉に隠されているものが別の意味を持つとは少女は気が付いていない。
愛らしく笑う少女を見つめて苦笑した青年は切なさを隠した色で月を見上げた・・・。