若き富田林氏、制裁の時-2
「ち、違います。銀次なんて知りません。他人の重荷です」
オレに正体を見破られた松原の弟の銀次は、往生際の悪いこと言いながら手で顔を隠しよった。
「今更顔隠しても遅いんじゃボケ!何が『他人の重荷』じゃ、そんなボケたことぬかすヤツは松原兄弟しかおるけ―!お前ら兄弟こそ大阪の重荷じゃ!しかし、お前エライことやってくれたのう。どう始末つけたろかい」
こいつはチョットやそっとでは許されへんど〜!
「亀やんくんごめん。まさか亀やんくんがこんなとこに居るて知らへんかったんやんか」
「アホ、お前のボケ兄貴も居るぞ」
「えっ?な、なんで兄ちゃんも居るん?」
「ここでバイトしとるんや。呼んだろけ?」
「堪忍や、オカンに告げ魔される!オカンにバレたら殺されてまうねん。にいちゃんがあんなやからオカンはオレに期待してるんや。亀やんくん、お願いやから言わんといて」
おっ!そらオモロイやんけ!
「お前のオカン怖いからのう。ええで、その代わり学校に言うたるわ。お前、浪速工業でオレの後輩やったな、まだゴンタロウ居るやろ?ゴンタロウに言うといたるわ」
オレは外見がやくざチックな生活指導の教師の名前を出した。
「アカンて、ゴンタロウはアカン」
「ええやんけ、お前のオカンより怖ないやろ」
「アカンねんて!先週、オカンと一緒にゴンタロウに呼び出されたんや」
「それって『げんこつか退学どっち取る?』て親に聞くやつか?」
「そう、オカンがゴンタロウに泣いて頼んでげんこつで許してもろたんや」
「げんこつ何回やった?」
「2回」
「停学2週間か。先週ちゅうことは今も停学中やないかい」
「亀やんくん、エライ詳しいなあ。経験者?」
「どアホ!お前みたいな不良と一緒にすな!オレは優等生やったんじゃ。しゃーけどお前、停学中に問題起こしたから退学間違いなしやのう!オカン怒りよるぞ〜」
「問題て、店の不手際指摘しただけでそんなに悪いことしてないやんか」
「アホ!立派な恐喝じゃ!」
くっそ〜!こいつやて知ってたら3回もチビらんかったのに。
「うっ」
「器物破損もあるな」
ガラスで傷ついた足が疼くやんけ!
「ううっ」
「プラス業務妨害やな」
誰がこのガラス片づけるんじゃい!
「うううっ」
「さらに強要じゃ」
あの特性コーヒーには身震いするで。
「ううううっ」
「それに一番の罪は暴行罪じゃ!オ、オレの髪の毛どないしてくれるんじゃ!ボケ―――!」
ううっ、ムチャクチャ、ハラタツノリやんけ―――――!
「うううううっ」
「ホテルが告訴したらお前逮捕されるど」
「うううううっ、弱みに付け込んでチョット小遣い稼ぎしよう思ただけやのに…」
銀次め、今頃問題が大きいことに気付きよって、ドンドン萎んでいきよるがな。うひひ、オモロいがな〜、お前もチビれ!