若き富田林氏、名士と面会す-3
「おい、岸和田〜、なんか疲れる人らやのう〜。ここ大丈夫か?」
「まあ、あんな感じやろ。社長は普段は居らんから気にせんでええしな」
「石川ってオッサン、鬱陶しそうやのう!」
「わかるか〜、メチャ鬱陶しいで。『オレはお前らプー太郎とちゃう!しゃーなしで手伝うたってんねんオーラ』バリバリや!あっ、そうそう、あのオッサンなあ、お前が欲しがってるGT−Rに乗ってんねんで!」
「ホンマかい!腹立つオッサンやのう。しゃーけど、頼んだらチョットくらい貸してくれるかな?」
チョット仲良くしようかな。
「止めとけ止めとけ!乗ったら恥かくで」
「なんでやねん」
「あのオッサン、感覚がチョットぶっ飛んでるや。GT−Rもトラック感覚でな」
岸和田が意味深なニヤニヤ笑いを浮かべた。
「どういこっちゃ?」
「『どういうこっちゃっ』てか?それが傑作なんや!ぶっ、ア、アカン、ぶわっはっはっは、思い出したら腹イタイ、イッヒッヒッヒ〜」
また出たで、勿体ぶりの1人ヨガリが。
「なんやねん、勿体ぶらんとはよ言え」
「あ、あのオッサンのなあ、うっひゃっひゃ、G、GT−Rがバックする時になあ、ア、アカン、堪忍してくれ〜イヒヒヒヒ」
「しばくど!」
「ヒ―、チョット待て、息整えるから…。フ―――!ヨッシャ、い、言うど―――!」
「言え!」
「ヒ―、やっぱりアカン、イヒヒヒヒ―!は、腹イタイ、ヒヒヒ―」
「ええ加減にせえ!」
バシッっと岸和田の頭を叩いたのは仕方がない。この場面では聖子ちゃんでも千里ちゃんでもしばくやろ。
「イタッ!しばかんでもええやろ、イッタイなあ」
「次は顔面蹴るど!」
「わかったわかった蹴られてたまるかい!ええか、あのオッサンのGT−Rがバックする時になあ…。プッ!ア、アカン、ツ、ツボに入ってもた―、思い出したら、ヒャ―、た、堪らん、堪忍してくれ――――」
「殺す!」
「ゲホッゲホッ!ま、待て待て、わかったわかった首絞めるな、ゲホッゲホッ!バ、バックする時にやで、トラックみたいに『バックします。ご注意ください』ちゅう音が出るようにしとんのや!」
「なんやて―――――!お、お前、G、GT−Rやで!気は確かかあのオッサン!」
「くくくっ、団地に住んでるから危ない言うて特注したらしいわ。あのオッサンに掛ったらGT−Rもトラック並みに扱われるんや」
「ホンマかいな…、憧れのGT−Rが…、夢が壊れるがな…。なんや、オレもう疲れてしもたわ」
オレはガックリと膝を付いた。
「大丈夫か!傷は浅いど!」
「アカン、しんどい…。岸和田、すまん今日はもう帰って寝るわ」
「何言うてんねん、まだ何もやってないやんけ」
「こんな気疲れするとこ知らんわ。居るだけでパワーが無くなってくる気がする」
「気のせいや、気のせい。もう、そこが控室や、とりあえず入るぞ」