僕らの日々は。〜台風来たりて。〜-8
「ん、そうね……役目を果たしたからハイさよなら、ってのもかわいそうよね」
ふれふれ坊主を見つめる事、数秒。
「よし。それじゃあ同じ数だけてるてる坊主を作って戦わせましょう!これからの天気で勝敗が分かるわ!」
「……人類史上初の対戦カードになりそうだね」
てるてる坊主vsふれふれ坊主、ここに開幕。
こうして、篠宮家の窓際には総勢20体の手作り坊主がぶら下がる事となった。
「これで雨を呼ぶ力と晴れを呼ぶ力のどっちが強いかはっきりするわね!楽しみだわっ」
「………………」
いやまぁ、何と言うか。
一般家庭の窓際にてるてる坊主達を20体も吊すと、だいぶ窮屈そうだ。
擬音にすると、『みっしり』って感じだろうか。ラッシュアワーの通勤電車、みたいな。
……両坊主の健闘を祈る。
まぁ、ほどほどに頑張っていただきたい。
「個人的には、カンカン照りも土砂降りも遠慮したいしね……」
「ん?何か言った?」
「いや何も」
〜〜〜〜
そうして数時間後。
「……これはまた、何と言うか」
夕方、雨が止んだので家に帰る事にしたのだが。
外に出て空を見ると、
「……見事なまでに、よく分からない天気だな」
空は厚い灰色の雲に覆われていた。だがよく見れば雲の切れ間からちょっとだけ太陽の光が差し込んでいて、しかし気にする程度でもない微量ではあるが、雨も降っているような気もする。
この勝負、引き分けといったところか。
ちらりと二階の一葉の部屋の窓を見ると、みっしりと詰まった手作り坊主達。
死闘を終えたその姿は、どこか哀愁が漂っているように見える。
(ま、なんにせよ……お疲れさま)
台風一過。
明日はきっと気持ち良い晴れになるだろう――。
『台風来たりて。』 了