僕らの日々は。〜台風来たりて。〜-7
▼▼
耳慣れない音で目が覚めた。
「――ん、あれ?」
ここどこだっけ?などと思ったのもつかの間、一葉の部屋に泊めてもらっていたのを思い出す。耳慣れない音の正体は、一葉が目覚ましに使うアラームの音だった。
むくりと起き上がって隣を見ると、一葉はまだ眠っている。
「……んむぅ……」
鳴り響く目覚ましのアラームにむずかるその様子は小さい頃と変わってなくて、なんだかちょっと微笑ましい。
とは言え、女の子の寝顔を盗み見るなんてあまり趣味がよろしくないよな。
「……ほら、一葉。起きて。朝だよ」
「んん……、ぁう?朝?」
「そう、朝」
そっかぁ、とつぶやきながら眠そうに目をこすり、
「……う?え、春風っ?」
びっくりしてこっちを見た。一葉もすっかり忘れてたらしい。
「春風です。おはよ、一葉」
「おはよう……あー、思い出したわ」
「僕も最初忘れてたよ」
「あ、そうだ!台風は――」
その言葉に、僕は無言で窓の外を指差す。起きたときからその音は聞こえていた。
そう、外は――
「……どしゃ降りね」
まさに台風直撃!と言わんばかりの豪雨。
窓際に吊された雨祈願のてるてる坊主達の顔が、どこか誇らしげな笑顔に見えた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
結果から言えば、一葉の願い通りに学校は休みになった。
なんでも主要な交通機関が軒並みストップしたりしているらしい。まぁこの暴風雨ではさもありなん、だ。
そうして結局一葉や陸斗君とゲームで遊んだりして昼まで過ごしたわけだが――
「一日中家にいなきゃいけないってのも、退屈ねぇ」
昼過ぎ、再び一葉の部屋にて二人でダラダラしていたら、一葉がそんな事を呟いた。おいおい。
「……ふれふれ坊主まで作っておいて、それはどうかと思うよ?」
「いざ一日休みってなると、意外とやる事が無いものなのね」
「暇を持て余すってのも、贅沢な悩みだと思うけどね」
「学校にいる間は、少なくともやる事が無くて退屈に感じるってことはないのよねぇ」
はぁ、とため息を一つ。
そしてしばらく何か考えていたかと思ったら、
「……よし。てるてる坊主を作りましょう!」
作るらしい。
「あの、一葉。せっかく作ったふれふれ坊主はどうするのさ?」
頑張って(多分)雨を降らせてくれたのに、存在を全否定なんてあんまりだろう。