僕らの日々は。〜台風来たりて。〜-4
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「ねー春風ー」
「んー?」
「ひまー」
「僕に言われてもね……」
ふれふれ坊主を作り終わった後、座って雑誌を読んでいた一葉だったが……暇を持て余したらしく立ち上がってベッドへとダイブ。
「ひーまひまひま、ひーまひまー♪」
「また妙な歌を……」
「ひまー、ひまー」
そのままうつぶせになって足をバタバタし始め……って、ちょっと待て!
「あの、一葉」
「なにひまー?」
「何その語尾……じゃなくて!あの、えっと……足をバタバタするのやめなさい」
「え?うるさかった?」
キョトンとする一葉。
……あぁもう、やっぱ言わなきゃいけないのか。
「いや、そうじゃなくてね……その、今、一葉スカートだから」
「――ぁ、わわっ!」
咄嗟に目は逸らしたものの、こちらに足を向けた状態でバタバタなんかしたら……いろいろと見えそうでヤバいわけで。
いや、もちろん見なかったけど。
一葉は慌てて座り込み、ジト目をこちらに向けてくる。
「……すけべー」
「いや見てないって。というか、もう少し気をつけて行動してください」
「うー…、分かったわよ」
若干赤くなった一葉から返事が返ってきた――その時。
不意に、周囲から光が消えた。
「うわっ?」
「きゃっ?」
いきなり訪れた暗闇に、二人分の悲鳴が重なる。
「……停電?」
「みたいだね」
下手に動いてぶつかったりこけたりしても嫌なので、とりあえず座ったままで言葉を交わす。
停電か。……長引かないといいけどな。
「珍しいわね、停電とか」
「まぁそりゃ、しょっちゅう起こってもらっちゃ困るけどさ」
「それもそっか。なんかさ、暗いと心なしか外の音がよく聞こえるような気がしない?」
「あー、確かに」
言われてみれば、明るいときにはさほど気にしてなかったが……外の雨や風の音が耳に入ってくる。
「多分だけど、視覚じゃなくて聴覚で情報を得ようとする分、いつもよりそっちに意識が行くんじゃないかな」
「なるほど。何かの雑誌の受け売り?」
「いや、単なる思いつき。だから話半分に聞いてくれたらいいよ」
「了解。でもなんかそれっぽく聞こえるから不思議ねー」
くすくす笑いながらそんな返事を返す一葉。
……はて、何かおかしい事でも言ったかね。
首を傾げたのもつかの間――今度は世界が、光った。
数瞬の後に、遅れて響いてくる轟音。
「うわ、次は雷か。……にしてもえらく近かったな。どこも被害が無いといいけど」
「……………」
「ま、建物にはだいたいアースが通ってるから大丈夫だと思うけどさ」
「……………」
「……あれ?一葉?」
なぜか一葉が沈黙している。まだ暗いままなので、その表情はよく分からない。