僕らの日々は。〜台風来たりて。〜-3
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「……うん、こんなところね!」
満足げな一葉の声と共に、五体目の『ふれふれ坊主』が窓際に吊り下げられた。
その隣には、僕が作った顔つきのてるてる坊主が五体。
合計10体のてるてる坊主が仲良く並んでいる。
「これだけあれば明日は雨に違いないわね!」
「まぁ、人事を尽くして天命を待つってやつだよ。後は天任せ……かな」
雨も風も一向に弱まる気配がない。もしかしなくとも明日は休校になるかもしれない。
「まぁこの調子だと夜のうちに通過しちゃうかもしれないけど……って、どしたの一葉?」
「………………」
一葉は吊り下げたばかりのてるてる坊主達をじっと見つめて何か考えているようだった。
「……うん。決めたわ」
「何をさ?」
「ふれふれ坊主は撤去!」
「えっ?外すの?」
「ん」
言いながら、一葉は逆さまに吊されたてるてる坊主達を外していく。
だが外されたのは逆さまになっていた五体だけで、僕が作った顔付きの五体はそのままだった。
「こっちはいいの?」
「いいの!」
「なんで外したのさ?」
「だって見てたらちょっと可愛そうになってきたんだもん」
一葉はヒモをつけ変えながら答える。
「私達の都合でさー、この子達は逆さ吊りにされるんだよ?そう考えたらさー」
「いやまぁ、てるてる坊主ってぶら下げる為に作るモノだしね……」
「顔を書いても効果は同じなんでしょ?ならこっちの方がいいわ!」
そう言って一葉は今度は普通に吊るし直された五体のてるてる坊主に、顔を描きはじめた。
しばらくして、その作業も終わる。
そこには、
「……ん、たしかに」
「でしょ?」
楽しそうに笑う一葉の横で、十体のてるてる坊主がニコニコと笑っていたのだった。