僕らの日々は。〜台風来たりて。〜-2
〜〜〜〜〜〜〜
「ねぇねぇ!これだけすごい台風ならさ、明日休みにならないかしら?」
「んー、明日にならないと確かな事は言えないけど……可能性は高いかなぁ」
現在の状況でこの荒れようだ。直撃するのは今日の晩から明日の朝だと言っていたから、その頃にはさらにすごい事になっているかもしれない。
「台風で休校なんていつ以来かしら?」
「まだ決まったわけじゃないだろ……。あんまり期待してると後でガッカリするよ?」
「むぅ、人がせっかく盛り上がってるときに。……でもそうね、確率を上げる事なら私にも可能だわ!」
そう言うと、一葉は立ち上がって勉強机の方へ。
「ん?何するのさ?」
「何って……そんなの決まってるじゃないの」
一葉はにんまり笑ってこちらを振り返った。
同時にこっちへと突き出した手には……ティッシュペーパーの箱。
「『ふれふれ坊主』を作るのよ!」
作るらしい。
「……いやごめん。それ知らない」
「基本的にはてるてる坊主とおんなじよ!でも普通に吊したら晴れちゃうから、逆さまに吊すってわけよ」
「逆さまに、ねぇ……」
「あ、何よその疑わしげな顔は。私のオリジナルじゃなくって、ちゃんとそういう風習がある地域があるんだから」
「そうなの?」
それは初耳だった。
土着の風習っていうのは得てして面白いモノが多い。
てるてる坊主と聞いて僕も以前どこかで聞いた話を思い出した。
「そういえば……普通のてるてる坊主も、顔を描いちゃったら雨を呼ぶ為のものになるらしいね」
「そうなの?そっちは知らなかったわ」
基本的に、てるてる坊主と聞いてイメージするものには笑顔が描いてあったりするものだが……それは逆効果なのだ、とかなんとか。
「じゃあふれふれ坊主だけじゃなくて、顔を描いたてるてる坊主も一緒に作っときましょ!」
そう言って、一葉はさっそくティッシュを丸め始めた。と、笑顔でこちらにもティッシュを突き出し、
「ほら、ぼさっとしてないで春風も作る作る!」
まぁ、当然こうなるわけである。予想通りというか。
「はいはい。何個作るの?」
「とりあえずいっぱい欲しいわね!ふれふれ坊主も一人じゃきっと寂しいもの!」
「りょーかい。輪ゴムある?」
外の荒れようなどどこ吹く風、僕らはのんびりとてるてる坊主を作り始めた。