龍の祝福-5
俺のオンボロアパートの部屋に、女の洋服がぶら下がっている。
その持ち主は、今シャワーを浴びていた。厚かましくも、俺の部屋までついてきたのだ。
頬がじんわりと痛んだ。一週間はこの痣は消えないだろう。その間は”遊べ”ない。
そうなった元凶がショウコと名乗るこの図々しい女だった。
その代償を支払ってもらおうか。無論、体でだ。雨に濡れた時、体のラインを見た。
いい体をしていた。グラマーではないが、体をよく使いこなしている人間の洗練されたラインに見えた。
この体を、めちゃくちゃにしてやりたい。
そういう気分がどこかにあったから、女をうっかり部屋に上げてしまった。
同時に、危険な何かをショウコから感じてもいた。
この女に手を出してはいけない。俺の心の中のどこかで、そんな声も聞こえた気がする。
あれこれ考えていると、ショウコが髪をタオルで巻いて居間に入ってきた。
俺のシャツとトランクスを身に着けていた。眼鏡は伊達なのか、外してある。
シャツはブカブカである。トランクスは尻の容積があるからか、ぴっちりしている。
そのトランクスから、ショウコのすらりとしたしなやかな白い足が伸びている。
「ふ〜、スッキリした! 何か冷たいもの、ある?」
「無いな。水なら、あるけどな」
「水って、もしかして水道水? 何この部屋、よく見たら冷蔵庫もないじゃない?」
「使わないからな。外食するか、弁当買ってたらいらないだろう」
「今時不経済な男ねェ……それじゃ、女の子にモテないわよ」
「モテなくもないさ。今日はおかしな女につきまとわれたけどな」
ショウコはコップで水をゴクゴク飲んでいる。
「あたしと会わなかったら、退屈な一日だったでしょう? ユウジ君?」
「意味もなく殴られるくらいなら、退屈な方がいい」
「意味はあったじゃない。あたしも結構モテるのよ? さっき見てたでしょう?」
ショウコは俺の隣に座って、腫れた頬の具合を少し見ている。
シャツはボタンを下の方だけ掛けているので、その隙間から彼女の白い首筋や鎖骨、その下には胸の谷間も見えている。ブラは、つけていなかった。
そのショウコの体から、うっすらと甘い香りが漂ってくる。