社長室での淫事-7
「こんにちは、先生。いま少しよろしいですか?」
「ああ、カオリちゃんのお母さん。どうぞ、テスト結果はもう全部戻ってきましたか?」
「ええ、おかげさまで今回は全部ね、目標の80点以上だったんですよ……ところで、いまのは山岸さんの奥さんかしら?」
「あ、はい。そうですが、何か?」
「いえ、こんなこと先生に言うのも何なんですけどね、山岸さんの奥さんって夜になるとお子さんを虐待してるんじゃないかってすごい噂で……あ、これ絶対内緒ですよ。いつだったか、通報されて児童相談所の職員が飛んできたなんてこともあったみたいで」
嬉々として他人の噂話に興じるのが、ここの母親たちの特徴だった。適当に相槌をうっておくだけで、母親たちの裏の顔を山のように知ることができる。いまこうやってマモルの母親を貶している本人も、別の母親たちの噂では昼の間に自宅に若い男を引っ張り込んで浮気しているということだった。真偽のほどは知りようもないが、有閑マダムたちの裏の顔を知ることはマヤにとって非常に興味深かった。
「……ということですので、カオリちゃんはこのままいけば、中学3年時の成績で推薦入試が受けられるはずです。ただ、気を抜かずにこれまで通り頑張るようにお伝えくださいね」
適当な学習アドバイスをして、カオリの母親との話を終える頃には夕方の4時を過ぎていた。あと30分もすればアルバイトの講師たちが集まり、5時には授業を始めなければならない。マヤは軽く背伸びをした後、鞄の中から携帯電話を取り出し、着信の確認をした。表示された画面には着信履歴が1件。メールが2件。音を消していて気がつかなかったが、電話はほんの5分ほど前に掛ってきていたようだった。留守電にはひとことだけ男の声でメッセージが残されていた。