異世界の王-1
キュリオに問われたエデンは考えていた。
人界の王はそういうものだと勝手に納得していた自分がいる。彼女の本音を聞いたことがないエデンはキュリオの言葉を重く受け止めた。
「・・・そうだな・・・
やっと、人としての幸せを手に入れたのかもしれない」
だが、そんな幸せもつかの間で・・・
人界の王は輪廻。この一瞬の幸せを見せてしまったのはあまりにも酷なのではないか・・・
「アオイは知らないんだ。
人界の王となったらこの世界へ戻ることが出来ないということを・・・」
「エデン・・・君が羨ましいよ。
なぜ私は人界に立ち入ることが許されないのだろう・・・」
エデンは離れた場所にいるエクシスとアオイに目を向けた。愛する者と引き離され、この先・・・永遠にも等しい時間を生きなくてはならない葵は・・・かつての彼女のように一心に民を思い続けることが出来るのだろうか?
黙って聞いていたティーダもマダラも何が最善の選択なのかわからずにいた。
「葵は・・・彼女は迷うような人間じゃない。王として間違ったことを選ぶとは思わないが、人界にも彼女を待っている者たちがいる」
エデンはキュリオに向き直り、待つ者というのが民だけではないことを伝えた。
「葵の側近の神官たちだ」
「三千年以上も彼女の傍を離れず、娘や妹のように・・・あるいは恋人のように見ている者もいる」
「・・・恋人?」
キュリオやティーダの眉がひそめられた。
「葵の王宮に顔を出した時のことだ。葵が出かけてるっていうから俺は昼寝して待っていた」
・・・やがて戻ってきた葵がエデンを見つけて肌掛けをかけたとき、エデンが目覚めて近づいていた葵の顔と額をぶつけてしまったそうな。
「・・・口付けしてると思ったんだろうな。神官の一人が怒鳴り声をあげて葵を俺の視界から奪って行った」
「親心とかだろ?」
ティーダは小さく笑った。
「・・・そう思うか?
寝るときも水を浴びるときも・・・たいていそいつが傍にいた。・・・愛おしそうに葵の唇を撫でるなんてのはよく見かけたな」
(・・・キュリオまんまじゃねぇか)
と、内心ティーダは思ったが口には出さなかった。
(つまり・・・その神官は葵を女として見ているということか・・・)