空っぽ-6
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10月のよく晴れた日曜日だった。
公園のそばを歩いていると道の端っこに絵を並べている人を見かけた。
私はそばに寄り、よく見たら色んな人の顔が真っ四角な色紙に書いてある。
何だか古ぼけた写真みたいにも見えたけど、色えんぴつで上手に書いてあるのだ。
私はその中に知ってる人がいないか探してみた。
誰かに似てるでもないけれど、何で知ってる人がいてそうな気がしたのかと思うとその絵の中の人はみんな輝いて見えるからだった。
明るく見える人は私には懐かしい。
だって、セックスしてあげるとみんな私には優しい顔をしてくれるんだもん。
絵の中の人はみんな輝いてるのに描いてる人はメガネをかけた普通の人だった。
「描いてみようか?」
その人は優しい顔をしていた。
「この絵、売り物なんですか?」
「売り物であって売り物でないような…
普段は似顔絵を描いて売ってるんだ。」
私もこんな風に輝いて見えるのだろうか?
この前、拓実と遊んだ「ヤリマン」の写真会を思い出して、ちょっと恥ずかしくなった。
その人はさらさらっと私を眺めながら色紙に描いてみせた。
色紙の中の私は大きな帽子をかぶって笑ってみせていたけど、私に似てるような違う人のような…
首を傾げて見ているとその人は言った。
「イメージだよ、気に入らなかったかい?」
「ううん、上手に描けてるけど私じゃないみたい…」
こんな時はたぶん、せっかく描いてくれたんだから褒めなきゃならなかったのだろう。
だのに私ったら正直に思った事を言ってしまった。
「僕にはこう見えるんだ。
よかったらあげるよ。」
私は嬉しくなった。
セックスしてない男に優しくされるのは初めてだと思う。
「ねぇ、させてあげようか?」
この人と仲良くなりたかったから、そんな事を言ったのだ。
「何?」
「セックスよ。」
「何で?」
「絵をくれたし、優しくしてくれたし、仲良くなりたいの。」
その人はメガネの奥で何も言わなかった。
何だか私は悲しくなったのだ。
「それじゃぁ…」
泣き出しそうな私に目を上げて、その人は何か言い出そうとした。