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画面の中の恋人
【純愛 恋愛小説】

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画面の中の恋人-10

 自室に戻り、再び画面を立ち上げる。今朝届いたメッセージの画面を見ながら、ゆっくりと返信を打つ。

『名無男さま 
こんばんは。お返事に時間がかかってしまって申し訳ありません。いつも優しいお気づかいありがとうございます。
 まず、ひとつ提案があります。もしもお嫌でなければ、コメントやメッセージのなかでお互いに敬語を使うのをやめてみるのはどうでしょうか。ちょっとしたことですが、距離が縮まるような気がして……ごめんなさい、うまく説明できないのですが。

 それから、最近疲れているようだと言われるのはまさにその通りです。体は特になんともないのですが、以前からブログにも書いているように夫のことでずっと悩み続けています。同じ家の中にいるのに、もう何年も会話がありません。もう、きっとこのまま修復はできないのだと思います。

 この半年、名無男さんからのコメントにわたしはずいぶん助けられてきました。こんなことを書くと気持ち悪いと思われるかもしれませんが、わたしは名無男さんをひとりの男性として意識しはじめています。結婚しているとお聞きしたのに、こんなこと書いちゃうなんて最低ですよね……』

 そこまで書いて、乃理子の指は止まった。なんてことを書いているんだろう……でも、これが今の自分の本当の気持ち。このまま送ったら、きっと名無男は二度とメッセージを返してくれない。さっきの明彦の行動で混乱した勢いで、こんなことを書いてしまったけど……

 いずれにしても、これを伝えずには先に進めない。震える指で送信ボタンをクリックし、そのまま画面を閉じてパソコンの電源を落とした。


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