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王様じゃんけん
【幼馴染 官能小説】

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伏兵は女王様 <後篇>-1

「それでは隆、姉様、今日は長々とお邪魔しました」
「おうっ! また勉強教えてくれよな?」
「なぁに? 今日はそれが理由でユイちゃんを呼び出してたの?」

私が何気にそう聞くと、
隆は少しだけ困った様子で頭を掻いた。

「確かに考えてみれば夏樹お姉様ほどの幼なじみがいるのだから、勉強もみてもらえればいいのにですね?」
「うっ…… そ、それはその…………」

狼狽える隆を見ながらふと私は思いだした。

そう言えばもともと私は、夏休みの間隆に勉強を見てくれと頼まれていたのだ。
それが先週あんな事があったばかりに、どうにも顔を合わせ辛くなってしまい、
私の足がなかなか向かなかったから……

(そうか、だからユイちゃんに頼んで勉強を見てもらっていたのか…………)

「あ、あは…… そうね? なんなら次は私が…… 見てあげてもいいわよ?」
「うえぇ? あ、ああ…… えと………… んじゃぁ…… その…… お願いしようかな?」

不自然な私と隆のやりとりに、なんだか疑いの眼差しを投げかけるユイ。
けれど、どこか納得した様子ですぐまたにっこり微笑むと、

「じゃぁ隆…… また姉様と会うのが気まずい時は呼んで?」

と、すっかり何もかも見透かされていた。

淡々とした口調は場合によって誤解を招きかねないけれど、
こうした場の空気を瞬時に読めるユイにどこか私は憧れてしまう。
その容姿も手伝って、きっとクラスでも人気があるだろうに、
肝心のユイが男に興味ないのだから、
なんとも世の中と言うのは一筋縄ではいかないものだ。

「ユイちゃん…… 今日はホントにゴメンね?」
「はい?」
「その…… 叩いちゃったりして…………」
「姉様………… もうその話はいいのです」
「でもっ これからも私、ユイちゃんと仲良くいたいから…………」

もちろん私の言う『仲良く』は友達としての意味だが……

「痛い………… 痛い痛い痛い痛い痛いでーす!」
「え、何? いきなりどうしたのユイちゃん?」
「姉様にぶたれた頬が急に痛みました」
「えぇっ! う、ウソ?」

突然のユイの芝居がかった訴えに、思わず慌ててオロオロする私。

「早くっ、早くここにチューするのです!」
「わ、わかった…… じゃぁほっぺに………… って何言ってんのっ!」
「早くです! チューしてくれたら痛みが消えて無くなるのです」
「だって…… そ、そんな事言われてもっ えっと…………」

私は困ったように隆を見るも、
やれやれといった様子で肩を竦めている。

「ううっ…… わかったわよ…………」

私は恥ずかしながらも、ユイの頬にそっと唇を当てた。
同性とは言え、人様の頬にキスするなんて、
幼い日の隆にさえした記憶のない行為だ。

「えへ、ありがとうございます。これでもう、痛みは消えましたので気に病むのは無しですよ?」

そう言ってユイは嬉しそうに頬を撫でながら、
満面の笑みで手を振り隆の家を後にした。


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