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王様じゃんけん
【幼馴染 官能小説】

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伏兵は女王様 <後篇>-6

「馬鹿っ!!! 早とちりしないでっ! まだっ 今はまだ言わないでってだけじゃない!」
「な、夏樹姉ちゃん!?」
「そ、そんな…… そんな事いきなり言われて…… はいそうですかなんて言えないのっ」
「…………う、うん」
「私はっ! 私だって隆の事っ………… ぐす……」

結局、私はその先を言わなかった。
いや、言わなかったのではなくあまりに涙が溢れてしまい言えなかったのだ。

おろおろしながらも、黙ってシャツの胸元で私の涙を吸い取る隆。
すんすんと鼻をすすらせながら、
まるで幼い頃、二度と帰らぬ父をひとり寂しく待ちわびていた時のように、
私は何年かぶりに涙を流してしまった。

「な、夏樹姉ちゃん…… その…… やっぱり『王様じゃんけん』しようか?」
「……ぐす …………もうしない」
「えーっ さっき自分からしようって言ってたクセに……」
「…………やだ …………もう見せてあげないもん」
「ちぇっ! じゃぁ次やって俺が勝ったら…… 穴が開くくらい見てやるからな!」
「……………………馬鹿っ エッチ!」

私の涙を止めようと必死で戯けてみせる隆。
二つも年下の隆に気を使わせるなんて、
私はどこまで甘えれば気が済むのだろうか……

「あ、そう言えば今週末さ…… 河川敷で例の夏祭りだね?」
「…………ん」
「昔はよく姉ちゃんに連れて行ってもらってたなぁ…………」
「だって…… 隆が行こう行こうって何度もうるさいから…………」
「あはは、いつも夏樹姉ちゃんは浴衣着て………… 夜店で色々買ってくれてたっけ?」
「…………うん」

結局私たちの関係は、いまだ幼なじみのままだ。

「えと…… こ、今年はさ…… その…… 俺が連れて行ってあげようか? なんて…… あはは……」

だから二人でお祭りに行ってもなんら不思議はない。

「…………浴衣 ……着てもいい?」
「お、おう! もちろんっ!」

ただ隆は私の事が好きで、私は隆の事が好き、
そう、今はまだそれだけの関係なのだから……

その夜、私はユイと隆が抱き合っている姿を想像しながらひとり戯れた。
得も知れぬ嫉妬心とただならぬ背徳感、
それでもなお感じてしまう淫らなこの身体を恨みながら…………


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