兄妹以上、恋人未満-8
翌日の午後はどんよりとした曇り空だった。
寝不足でずしんと重い頭のまま、着替えて顔を洗い、食事も摂らずに家を出た。弟はいつ帰ってきたのか、大きないびきをかいて寝ていたし、両親はまだ戻っていないようだった。ケン兄ちゃんの家まで歩きながら、昨日の出来事を思い出す。強烈な体の感覚が蘇る。目を閉じ、頭を大きく横に振る。もう、考えちゃダメ。
ケン兄ちゃんの家までは5分も歩けば着く。わたしのところと同じくらいの大きさで、普段はおじさんとおばさん、それにケン兄ちゃんの3人で暮らしている。お互いの家族がしょっちゅう行き来しているので、あまり他人の家という感覚が無い。
見慣れた玄関の呼び鈴を鳴らすと、インターフォンから眠そうなケン兄ちゃんの声が聞こえた。
「……はい」
「あ、寝てた? ミカだけど、いま大丈夫?」
「ああ、ちょっと待って」
ドタドタと階段を降りる音がして、すぐにドアが開けられた。寝起きのぼさぼさ頭を掻きながら、黒いスウエット姿のケン兄ちゃんが笑顔で迎えてくれる。
「はい、どうぞー。今日さ、おまえんちの父ちゃんたちと出かけるからって朝から親いないんだよ。散らかってるけど勘弁なー」
細い階段を上がってすぐのところにケン兄ちゃんの部屋がある。部屋から廊下にまではみ出して、ゲームソフトが散らかっていた。
「ああ、きっとおばあちゃんの病院にみんなで行ったんだね。あ、このゲームってマサルのじゃない? 散らかしたまま帰ってしょうがないなあ……昨日遅かったの?」
「わはは、そうそう、昨日はあれからマサルがカーレースのゲーム、何回もやりたがって大変だったよ。あいつ相変わらず負けず嫌いだな。勝つまでやるってきかないから、朝になっちまった」
「ふふ、マサルらしいなぁ……」
部屋のベッドにもたれて座ると、いつもと変わらないケン兄ちゃんの様子に安心したのか急激に眠気が襲ってきた。目をこすりながら笑うと、心配そうなケン兄ちゃんの顔が近付いてきた。