ハニービー-1
夜、平凡なアパートの2階。
ドアを開けると、黒いスーツを着た、やたらガタイのいいおっさんが立っていた。
そのおっさんには、眉毛が無かった。眉毛どころか、髪の毛も無い。ツルツルである。
威圧感の塊のようなおっさんである。
一般人なら、どんな人間も避けて通るような、そんなおっさんだった。
そのおっさんに、恐る恐る俺は準備していた金を渡した。
「本日はお電話ありがとうございました。素敵な一日を過ごされますよう」
おっさんは金を受け取ると、にこやかにそう言い、俺に一礼した。
眉毛もないので、実際ににこやかにしていたのかは、よくわからない。
おっさんは、しばらく待つように丁寧に俺に言うと、停めてあるワゴン車の中に入る。
それと入れ替わって、一人、女の子が車から出てきた。
Tシャツにショートパンツの小ざっぱりとした格好をしている。
髪は短めで、ボーイッシュかつスレンダーな印象だが、体のラインはいかにも女性らしくメリハリがついていた。
意志の強そうな眉に大きな瞳は、なんとなく年少の美少年を思わせる。
もしかすると、女性なのに女性からモテるような、そんな子なのかもしれない。
しかし、そんな事より、俺が思ったのは――