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ハニービー
【コメディ 官能小説】

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ハニービー-2

「はじめまして、”ハニービー”のハナと申します。本日はよろしくお願いします」
「……ハナって言うか、もしかして君、A高校の陸上部にいた――いでででで!」

 俺がそこまで言いかけると、ハナは俺の鼻を手でギュッと摘んだ。
 激烈な痛み! まさに、ハチに刺された如き、そんな一撃だ。
 つーか、俺は何で高い金払った上に、鼻摘ままれてんだ。

「おい、いでえよ、いでで、ばなぜよ!」
「ハナが鼻を摘むとは、これいかに」
「お゛いごら! ぞんなくだらんダシャレは、どうでもい゛いがら!」

 ようやく俺の鼻を離すと、ハナと名乗る女は無表情で続けた。

「こら、駄目でしょう? 女性の過去をあれこれ詮索しちゃあ……幽霊部員だったタケル君?」
「君も覚えてるんじゃないか……」

 どうやら、ハナは俺の高校の同級生に間違いなさそうだ。
 5年ほど前の話だが、彼女の外見はまるで変わっていないからすぐに分かった。
 もっとも、当時彼女とさほど交流があった訳ではなく、面識がある程度の話だが。
 彼女は長距離走の選手で、実力は県内でも上位に入るレベルで部内でも目立っていたのだ。
 俺も短距離では自信があったが、膝に故障を抱えてしまい、部活を続けることが出来なくなってしまった。だから、幽霊部員とは少し違うとここで反論しておきたい。
 だが、そんな事ももはや遠い思い出である。

 その彼女が何故、今ここにいるのか。
 だが、彼女の言うように、今は過去を詮索している場合ではなかった。
 ハナはなかなかチャーミングな容姿をしているのだが、俺は俺の為に決断をしたい。

「あの……ハナ、さん。チェンジ、って出来るんだよね?」

 俺がそう言うやいなや、またハナの手が俺の鼻を摘んだ。
 先程より、力強く俺の鼻を絞り上げてくる。強烈な痛みで気が遠くなりそうだ。

「何よ。わたしに何の不満があるのよ。言ってごらんなさい?」
「お゛い、ぞのまえ゛に、鼻から手を゛はな゛せ」

 ハナは、それからたっぷり10秒は手を離さず、俺が苦痛で意識を失いそうになる瞬間にようやく手を離した。

「さあ、言ってごらんなさい。言えるものなら!」
「なんでそう脅迫的なんだよ……だって、俺もさ、結構な料金払ったんだよ」
「そりゃあ、結構な料金でしょうね。わたしのような上物の女が来るくらいなんだから」

 ハナは自らの料金の高さに満足したのか、うんうんと頷いている。
 だが、俺はこういうのは初めてなのだ。
 それなりの訳があって、ネットで調べて、良さ気な所に奮発して頼んだのである。

「……だって、こういうので顔見知りが来ちゃったら、気まずくて何も出来ないだろう?」
「あら、高嶺の花だった同級生と性的な契約を結ぶなんて、淫猥な感じで素敵じゃない」
「(自分で自分を高嶺の花呼ばわりするとは……)……ともかく」
「ともかく、こんな玄関で立ち話なんて駄目よ。汚くて狭い部屋だけど、中に入りましょう?」
「ここは、俺の部屋なんだよ」


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