『The girl&boyU【in girls dream】』-1
その一瞬間は、何を思う間も無かった。
もう一瞬後、さっき目の前をよぎった飴色の閃光の意味を、ようやく怠惰な頭が理解した。
一直線に空を切り裂く、刃先を見ていたのだと知った
。
今更ながら、惚れ惚れするようなナイフ捌きだと思った。
死ぬのだ、と思った。
ざく、と燃え盛る炎の中でも良く通る、鈍い異音。
こちらに向かっていた刃先は、一体どの辺りに埋まったのか。
何と無く、両手を広げてみた。
うつむいた視線の先には、早くも暗褐色の血溜りが出来ていた。
近くに転がったナイフの柄が見えて。
その周りも、液体はするすると囲っていった。
「形見だよ」
突然に聞こえて来た、びっくりする程の、優しい声。
あまりにも現状に不似合いな声音に、理解は追い付かない。
ただとっさに男の声だとだけ分かって、男の方を見た。
目の前にあったのは、男の真っ赤な右手だった。
オレンジの光に照らされ、てらてらと光る右手がこちらに差し出されていて。
こんな状況下でも、思わず見惚れてしまうくらい。
穏やかに微笑んだ男の目が、私を見ていた。