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Twin's Story 8 "Marron Chocolate Time"
【学園物 官能小説】

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 春菜は何度も何度も挑戦した。くしゃくしゃに丸められた紙がいくつも春菜の足下に転がった。
 健太郎は、そうやって苦しみながら鉛筆を紙に走らせる春菜の姿を半ば驚異の目で見ていた。生まれて初めて見る、凄まじいとも言える光景だった。張りつめた精神力と妥協を許さない厳しい自己批判の目、それでも自信に満ちあふれた手の動き、額に汗しながらその小柄な一人の少女は自分が描く一枚の画と一心不乱に闘っているようにも見えた。健太郎の胸に繰り返し熱いものがこみ上げてきた。
 「やっぱりだめだ・・・・。」春菜は鉛筆を持った手をだらりと垂らしてうなだれた。
 健太郎は水着姿のまま春菜に近づいた。そしてイーゼルに立てられたスケッチブック、たった今描かれた自分の画をのぞき込んだ。
 「うまく描けてると思うけどな。」
 すぐ横に立った裸の健太郎の体温がほのかに感じられた。同時にチョコレートと健太郎の身体の匂いが混ざった何とも言えない甘い香りも漂ってきた。春菜はますます身体が熱くなっていくのを感じていた。
 「何が気に入らないの?」健太郎が春菜の顔を見た。
 「あなたの、力強さやしなやかさが描ききれてない。あなたの、優しさや柔らかさが表現できてない。」
 「お、俺の?力強さ・・・柔らかさ?」
 「これじゃただのスケッチ。私が描きたいのはあなたの中にあるもの。」
 「俺の、中にあるもの・・・・。」
 「どうすればいいかな、私、どうしたら本当のあなたを描けるかな・・・。」春菜はぽろぽろと涙をこぼし始めた。
 「春菜さん・・・・。」
 「私、もっと知りたい、あなたをもっと知りたい。好きなあなたを、もっと好きになりたい!」春菜は立ち上がり、泣きながら健太郎の腕に指を這わせた。そして鎖骨、厚い胸板に両手をそっと当てた。健太郎は身動きせずじっと立っていた。春菜の指が腹筋をなぞり、太股に触れた。「健太郎君の、全てを・・・・好きになりたい・・・・・。」
 「は、春菜さん・・・・。」健太郎はやっと小さく声を出した。春菜がゆっくりと顔を上げて、潤んだ眼で健太郎の眼を見つめた。それは、さっき自分の画と対峙していた時の厳しい眼とは別人のような、一人の可憐な少女の純粋なまなざしだった。健太郎は春菜の頬を両手で包み込み、静かに唇を重ねた。春菜の流した涙の味がした。ゆっくりと口を離した健太郎は囁いた。「俺で良ければ・・・・。」


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