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シンプソン家の裏の離れ。一階リビングの暖炉の前に健太郎は立っていた。ハーフパンツにノースリーブシャツ姿だった。
「こ、ここにこうやって立ってればいいの?」健太郎が言った。
「う、うん。ごめんね、シンプソン君。無理言っちゃって・・・。」
「いいよ。気にしないで。」
「真雪に無理矢理押し付けられたんでしょ?」
「始めはね。でも、考えてみればこんな機会、滅多にあるわけじゃないし、春菜さんが俺の身体が気に入ってくれてる、ってまんざら悪い気もしないし。少しやる気になってきた。」
「ほんとに?ありがとう。私、一生懸命描くから。」
「うん。この場は任せるよ。いろいろ指示して。」
「わかった。」
春菜は少し離れた位置に、窓からの光線を見ながら自分の位置を決めた。イーゼルを立て、スケッチブックを置いて椅子に座った。
「じゃ、じゃあ、シンプソン君。服を脱いでもらってもいい?」
「ぜ、全部?」
「恥ずかしい?恥ずかしいよね。やっぱり。」
「うん、ちょっと・・・。」
「水着ぐらいなら着ててもいいよ。でもなるべくヌードに近い方がいいけど・・・。」
「わかった。じゃあ、穿いてくる。ちょっと待ってて。」
健太郎は二階に上がって自分の部屋に入った。リビングで待つ間、春菜の身体は次第に熱を帯びてきた。
健太郎はすぐに降りてきた。上に着ていたものを手に持ち、下着の代わりにあの時と同じ小さなビキニタイプの競泳用の水着を身につけていた。その姿を見た途端、春菜の顔は火がついたように火照り始めた。
健太郎は暖炉の前に立った。
「す、少しの間、じっとしててね。」
「わかった。」
少し上に向けた澄んだ目、清潔感溢れる髪、逞しい僧帽筋、三角筋、上腕筋、大胸筋、そして極端ではなく自然に盛り上がった腹筋。小さく引き締まった大臀筋。大きいが脚のシルエットを崩さない大腿筋、ふくらはぎ。そして小さな水着に覆われた膨らみ・・・・・。春菜は無心に鉛筆を動かした。
「ありがとう。」春菜はため息をついた。「もういいよ。服着ても。」
「もう描けたの?さすが、速いね。」健太郎は床に置いていた服を着始めた。
「・・・でもだめ。こんなんじゃ、だめ・・・・。」春菜はたった今描いた紙を乱暴に引きちぎった。
「え?」健太郎は服を着る手を止めて顔を上げた。
「描けない。私、今一番描きたいあなたの身体が、描けない・・・・。悔しい。」
「じゃあ、もう一回描いてみてよ。」
「でも、もうあなたに恥ずかしい思いをさせたくないよ。」
「大丈夫。何だか平気になってきたよ。」健太郎は笑った。そして身につけかけていた服を脱いだ。「こんな身体で良ければいつでも提供するよ。」
「シンプソン君・・・・。」