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次の土曜日。朝から修平と夏輝は街を二人で肩を並べて歩いていた。県大会の剣道の試合では、修平が主将を務める剣道部は団体戦でも個人戦でも優勝していて、今はブロック大会に向けて練習に励んでいる最中だったが、この日だけ、奇跡的に半日の休みが取れたのだった。
夏輝は胸元の大きく開いた、ぴったりとした水色のTシャツに花柄のミニスカート、修平はカーキ色のハーフパンツに黒いTシャツ姿だった。
「なんで俺がおまえとつき合わなきゃなんねえんだよ!」修平はミニスカートから長く伸びた夏輝の脚をじろじろ見ながら言った。
「何よ、その言い方!あんたOKしたじゃない、学食で。どこ見てんのよ。スケベっ!」
「OK?し、したよ。したけど、よく考えたら、お、おまえと何すればいいか、わかんねえんだよ。俺。」
「こういうのを『デート』って言うのっ。こうやって一緒に歩くだけで幸せなんだよ、あたしっ!」
「そうかよ。金がかからなくて便利だな。」
「そうじゃないでしょっ!いやらしい目であたしの脚ばっか見てないで、も、もっとこう、肩を抱くなり、手を繋ぐなりできないかなっ!」
「わ、悪かったよ!知らねえんだよ!デ、デ、デートのやり方なんてっ!」
「あのう・・・・。」歩く二人のすぐ後ろから声がした。「どうして私、あなたたちのデートにつき合わなければならないのかな?」春菜だった。
記念すべき修平と夏輝の初デートの日取りが決まった途端、春菜はそれぞれから一緒に来てくれるように頼まれたのだった。真雪も頼まれたらしいが、速攻拒否したらしかった。当然だ。
「デートって、普通は二人きりで楽しむものじゃないの?」
「いいからいいから、」修平が言った。
「ずっとそこにいてね、春菜。」夏輝も言った。
春菜は大きなため息をついた。「来週デザイン検定があるのに・・・。」
道路を渡るために信号待ちをしている時、修平が出し抜けに大声を出した。「そっ!そうだっ!」
びくっ!夏輝と春菜は驚いて修平を見た。
「な、何よ、大声出さないでよっ!びっくりするでしょっ!」夏輝が言った。
「『海棠スイミング』に言ってみようぜ。」
「へ?」
「ケンタに会いに行こうぜ。」
「な、なんで急に・・・・。」
「どうせ暇だろ?」
「それはちょっとまずいんじゃないかな・・・・。」春菜がつぶやいた。「シンプソン君に見せつけに行くようなもんだよ・・・。」