伏兵は女王様 <前編>-1
八月──隆とあんな事があってからはや一週間。
勉強を見てやるなんて約束をしておきながら、
なんだか恥ずかしくて顔を会わせ辛かったものの、
そこは腐っても幼なじみ、
親同士もまたそれなりに中がいいわけで……
「あら夏樹ちゃん? いつもわざわざありがとうね〜」
「いえ…… あ、これ母からの預かり物です」
なんだかんだで用事を頼まれては、
否応無しに隆の家へと足を運ぶことは多い。
「隆、二階にいるわよ?」
「え? あ、はいっ じゃぁ…… お、お邪魔します……」
階段を登って突き当たりの部屋。
いつもは何も言わずにドアを開ける私だが、
さすがに今日ばかりはノックをしてみたりなんかして……
「た、隆? 夏樹だけど………… 入るわよ?」
大きく深呼吸をして出来る限りの笑みと共にドアを開ける私。
けれどその瞬間、目の前に飛び込む光景に思わず言葉を失った。
ガラステーブルに並ぶふたつのコップ。
くつろいだ様子であぐらをかく隆。
一見、普段と変わらぬ光景ながらそのすぐ横には、
這いつくばるような姿勢で腰を高くあげた少女の姿があった。
「お、おい…… もういいだろ?」
「駄目っ もう少し…… んっ…… 奥の方まで……」
隆の問いかけに悩ましげな声で答える小柄な少女。
短めの可愛らしいプリーツスカートからは、
チラチラとピンク色の下着が見え隠れしている。
「………………な、何やってんのあんたたち?」
その言葉に、ようやく私の存在に気がついたのか、
慌ててその場に立ち上がってはおろおろと周りを見渡す隆。
「な、夏樹姉ちゃんっ 違っ これはっ!」
大袈裟な身振りでうろたえる隆とは対照的に、
いまだ大きく足を開いては艶めかしく腰を振る少女。
まるで誘うようなその無防備な姿勢は、
さながら火照る体を慰めていたあの日の夜の私に酷似していた。
「ゆ、ユイっ! もういいから早く体を、その……」
「んっ…… もう少しで…… いけそう…………」
ググッと背中を折り曲げて、さらに高く腰をあげる少女。
その瞬間、すっかりスカートは捲れ上がり、
遠目にもわかるくらいにはっきりとピンク色の下着が露わになった。