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【サスペンス 推理小説】

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オフ会-3

 ヨネコさんが持参したノートパソコンを開き、実際にそういう類のコメントがついたページをいくつか見せてくれた。それはわかりやすい嫌がらせのコメントで『へたくそ、消えろ』だの『文章が下手すぎて目が腐る』だの、小学生のいじめっ子が書きそうなものだった。実際、ネットの中では小学生だろうが幼稚園児だろうが、パソコンの操作さえできれば自由に書き込める。

「これ、子供の悪戯とかじゃないんですか?」

「でしょ? わたしたちもそう思って無視することにしてるんだけど……」

 九官鳥が早口で今までの経緯を説明し始めた。嫌がらせを受けているのは特に決まった人だけではなく、今のところは不特定多数のメンバーが被害に遭っているという。ひとつひとつは他愛もない言葉で、基本的には無視していればそれ以上の害は何もない。ただ、こういったサイトに投稿している人たちにとっては、そういった嫌がらせのコメントが続くと地味に神経に障るもので、いまサイト運営者に何とか対策を取ってもらえないか相談しているところらしい。

「放っておけばいいのはわかってるんだけどね。投稿するたびにこういうのが続くとストレスになるし、もうあんまり投稿したくなくなるっていうか……」

 カエルも体を丸めてため息をついた。ウシガエルも後に続いてぼそぼそと呟く。

「もともとリアルの生活で溜まったストレスを発散したくて、こういう投稿を始めたようなものだったのに……逆にストレス溜まったんじゃ、困っちゃうよね」

「そうそう、楽しくなくなっちゃったらやってる意味ないもんね」

 そこからヨネコさんを合わせた6人は、いかに現実生活が大変かという不幸自慢のような会話を延々と続けた。いわく、旦那の母親の介護がどうとか、子供の教育がどうとかいう内容から、ご近所問題、嫁姑問題、旦那実家や親族との付き合い方にまで話が及んだとき、わたしも思わず「わかります、大変ですよね」と言いそうになった。

 彼女たちの話を聞いていると、意外にオバサンたちも繊細な心を持っているんだなということがわかった。ネット世界でもリアルの世界でも、誰かに何か言われたことをものすごく気にしたり、ちょっとしたことで傷ついたりするようだった。ヨネコさんも例外では無く、意外な一面を見れたという意味では貴重な時間だったと思う。

 夕方の4時を過ぎた頃、メガネが慌てた様子で立ち上がり「そろそろ買い物して夕飯の支度しなきゃいけないから」と帰り支度を始めた。それをきっかけに「じゃあわたしも」「わたしも」と挨拶もそこそこにバタバタと6人は部屋を出て行った。

 人数分の紙コップや、食べかけのケーキがのった皿はテーブルのうえにそのまま放置されている。予想していたことなので別に驚かないが、仲間うちでもうちょっと気を遣える人がひとりくらいいてもいいのにな、と思いながら、やっぱり類は友を呼ぶってほんとだな、としみじみ感じた。


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