アケミの新しい道-2
「しゃ、社長、あけましておめでとうございます」
「アケミくん、おめでとう。今年もよろしく」
ぎこちなく新年の挨拶をするアケミとは対照的に、心なしかいつもより晴れやかな社長の笑みが輝いていた。
アケミは社長のにこやかな顔を見た途端、ドギマギしてしまい決心が揺らぎそうになった。
(ダメダメ!散々考えたんだから!)
「社長!新年早々申し訳ありませんがお話があります」
「どうしたんだい?そんなあらたまって。いつもと雰囲気が違うよ」
「申し訳ありませんが、会社を辞めさせてく ださい」
アケミは辞表を取り出して一気にそう言いきった。
しかし、それを聞いた社長の反応は、一瞬キョトンとはした表情を浮かべはしたが、アケミの予想に反して驚いた様子は見れなかった。
「そうか、残念だよ。それでこれからどうするつもりだい?」
「えっ?」
アケミは淡々とした社長の様子を 見て一瞬何を言われているのかわからなかった。仮にも3年も体を重ねてきたのだ。アケミは社長がもっと取り乱すと思っていた。
「次の職の当ては有るのかい?」
「い、いえ、当てはありません。取りあえず田舎に帰ろうかと…」
アケミはそう答えながら目から涙が溢れそうになった。
(やはり自分は『都合のいい女』でしかなかったみたい…。社長はこの関係をそろそろ清算したかったのね。それを自分から口に出したアケミは、まさしく『都合のいい女』の見本じゃない…)
そう思うと悔しくなり、涙を流すような醜態をさらしたくは無かった。アケミは最後のプライドを振り絞って必死に涙をこらえた。
「そうか良かった。当てが無いのなら私がいい所を紹介したいんだけど」
社長は少しホッとした表情を浮かべて微笑みながら言った。
(な、何を言ってるの…。あなたを忘れるためなのに、これ以上アケミを傷つけないで… )
アケミは握りしめた拳をプルプルと震わせ た。