『かみさま』になれないけれど-2
ちょうどその時、控え室の扉がノックされた。
「我が花嫁を、迎えに来ました。」
白い礼服を着たルーファスが、優雅に手を差し出す。
「みんな待ちきれなくて城門が壊れそうだから、早く出てきてくれと、警備隊長に泣きつかれたよ」
そして、ふわりと抱きしめられた。
「では、クレオと準備をしてまいりますので。お早めに城門へ起こし願います」
後に控えていたリドが、流麗な声で告げ、一礼した。
「準備?あとはこのまま城門に行くだけで……」
首をかしげたクレオの手をリドが掴み、問答無用でひきずっていく。
「クレオ。野暮な事ぬかしやがらないように。あとでお仕置きですよ」
通路を曲がる時、サディスティックな笑いを含んだリドの顔と、真っ赤になったクレオの顔がチラリと見えた。
同じものを見たルーファスが、苦笑する。
「あーあ。クレオも気の毒に」
――まぁ、つまり、そういう事なのだろう。
「……カテリナ」
もう一度、しっかり抱きしめられた。
小さな低い声で、耳元に囁かれる。
「一番大事な事を、誓いにきた」
「え……?」
「俺は、君の『かみさま』にはなれないけど……君の背負った罪を、俺も一緒に背負うよ」
決して公にはならないだろうが、永遠に消えはしない事実。
夜想曲は聞えなくなっても、両手に染み込んだ血の量は変わらない。
それら全てを知って、なお『共犯者』の道を進む、罪深い意志が宣言される。
「ルーファス・d・ランベルティーニの名にかけて、誓います」
小指を絡めとられ、優しく口づけられた。