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堕ちた天使の夜想曲
【ファンタジー 官能小説】

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家名に勝るスキル-2

「バイアルドの飼っていた、アンジェラという少女の記録は、確かに乗っている」

 デスクに戻り、静かなよそ行きの口調で、ルーファスが重々しく語った。

「内容から、どうやら彼女はいいように騙されて殺し屋を務めていたようだ。

 裁判でも、この状況なら十分に周囲の同情を誘うだろうが、罪は罪だ」

「でしたら……!」
「まぁ、世間はこの手の話が大好きだから、もし彼女が生きていれば、死刑でなく恩赦を受けたかもしれないな」
「……生きていれば?」

「証拠書類を持って逃走しようとしたアンジェラを、バイアルドは殺したそうだ。死体は焼いて、骨も砕いて川に撒いたから、何も残っていない。詳しく記載されている」

 差し出されたページには、確かにバイアルドの筆跡で、そう記述されていた。

「そんな……嘘……」
「嘘か本当か確かめようにも、バイアルドは逃走中だ。それに、他の記述が全て本当だった所を見ると、信憑性を疑う余地はないな」
「!!!」

 信じられない。
 ルーファスは、「アンジェラ」の存在ごと……全てを揉み消したのだ。

「……悪いこと……です……」
「何が?」
「……」

 返す言葉も出ないカテリナから、ルーファスは手帳を取り上げ、パラパラとページを捲る。

「それにしても、日記の私生活部分には、アンジェラの事ばかり書いてある。……利用しようとした少女だったはずなのに、たいした溺愛ぶりだ」

 そして椅子にこしかけたまま、視線だけでカテリナを見上げ、小さく口端をつりあげる。

「この手帳がなければ、どこかの記憶喪失のご令嬢が、あらぬ疑いをかけられるのを防ぐ事は、難しかっただろうなぁ……」

 見上げる青い目は、ハッキリと伝えていた。

『この手帳の真価を、無駄にするな』

「あの……」
「この話は以上だ。 “カテリナ” 」

 手帳がパタンと閉じられる。
 リドが手帳をしまい、代わりに別の書類をルーファスの前に出す。

 どうしたらいいかわからず、黙ってデスクの前に立ち尽くしていると、ルーファスが羽根ペンを動かしながら、声をかけた。

「悪いが忙しいんだ。もっと何か話があるなら、夜に寝室で聞こう」
「え!?」
「婚約者なのだから、寝室も一緒なのは当然だ。もっとも話しの内容は、もう少し色気のあるものに限定させて貰うが」
「!!!」
「そういう事ですので」

 リドが扉を開いて退室を促し、涼やかな口元をニヤリと緩ませた。

「大人しくすっこんでやがって下さいませ。 “ 奥さま ” 」



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