夜会に出席 *性描写あり-1
周囲の惨状に引き換え、カテリナには数箇所の擦り傷と打撲があるくらいだった。
性的な意味でも、無事だったらしい。
ただ、ひどく疲れ果てていた。
「誰が助けてくれたのかしら……?」
自室のベッドに横たわり、付き添ってくれているクレオに、そろそろと尋ねてみた。
彼女は先ほどから、憤慨と困惑の入り混じった顔で、落ち着かない様子だった。
「クレオ、何か知っているの?」
「お医者さまには、興奮させるといけないからと、口止めされているのですが……」
たらいの水につけたタオルをひねくり回しながら、クレオはやっと口を開く。
「あの恥知らずたち、カテリナさまにやられたなんて言ってるんです!」
「わたし……に……?」
「まったく、もう少しマシな嘘をつけないんですかね!」
怒りにふるふる拳をふるわせ、クレオは目を吊り上げる。
「カテリナさまに数人がかりで負ける騎士って、どんな騎士ですか!おおかた、『順番』でも争って……っ!すみません……」
さすがにそれ以上を言う気になれないらしく、クレオはあわてて話題の矛先をかえた。
「でも、ご無事で何よりです」
「……ええ」
「フィオレッラさまは、何も知らないって言い張ってます。ルーファスさまが、今お話を……」
「ルーファスさまが!?」
思わず上体を起こした。
できれば、ルーファスにはこんな事を知られたくなかった。
「ええ。さすがにお耳に入れないわけには行きませんので……」
カテリナの表情から、心情を読んでくれたのだろう。クレオが気まずそうに言う。
「そう……ね……」
自分だけの問題ではないのだ。
本当に酷い目にあった女性たちもいるそうだし、このまま被害を増やすわけにもいかない。
また疲労がどっと出てきて、カテリナは横たわり目を閉じた。
幻のヴァイオリンの音色は、まだかすかに耳奥へこびりついている。
よく知っているはずの曲なのに、どこで聴いたのか思い出せない。
いつもあの曲を演奏していた人は……誰だったのだろう……