夜会に出席 *性描写あり-3
それから数週間。
ルーファスの態度は、以前とまるで変わらなかった。
カテリナが起こしにいくと、また冗談半分にからかい、子どもみたいに笑い転げる。
礼拝堂の出来事や暴行未遂など、まったく無かったかのようだ。
ほっとする半面、あの貪るような口づけの感触や、抱きしめられた腕を思い出し、ときおりなんとも言えないモヤモヤした気分になったが、それ以上考えない事にした。
あれはやっぱり、おふざけの延長線だったのだ。
赤と銀の悪夢も見続けているが、ヴァイオリンの音色はもう聞えない。
終わったのだから、もうそれで良しにしよう。
――夜会に出席してくれと言われたのは、そんな頃だった。
ルーファスは夜会の招待を全部受けるほど暇ではないので、半分以上は丁重にお断りするし、出ても顔見せ程度だが、たまにはしっかり顔を出す必要もあるそうだ。
「この間、つい君の話をしたら、ぜひ夜会に連れてきてくれと、頼み込まれた」
「私をですか?」
リドが主人へ冷ややかな視線を向ける。
「カテリナさまの自慢をあれだけされれば、周囲が興味を抱かれるのは、しごく当然と存じます」
「リド。自慢なんかしてないぞ」
「失礼いたしました。『ノロケ』の間違いでございます」
ともかく、夜会用のドレスが用意された。
ためいきが出そうな美しいサファイアブルーのドレスは、首元まできっちり真珠のボタンで留められ、襟元から腰にかけて、金と銀の細かい刺繍が流れるように施されている。
裾も同様の刺繍に彩られ、職人がどれほどの手間をかけたのか想像もつかない。
さらに、本物のサファイアが各所に縫い付けられ、いっそう輝きを加えていた。
はりきりまくったクレオは、見事に結い上げた髪へ、仕上げに大粒のサファイアがついた金の髪飾りをつけ、満足気に頷く。
薄く化粧を施され、鏡に映った自分の姿に、カテリナはかなり気後れした。
上半身から腰のあたりまで、体にピッタリとフィットし、スカートはそこから優雅に広がるマーメイドラインのドレスだ。
肌の露出こそ低いが、体のラインはこれでもかというほど際立っている。
「とても恥ずかしいのだけれど……」
「これでばっちりです!なにしろ夜会は戦場ですから!」
「せ、戦場!?」
パーティーで、何と戦えというのだろうか!?
「ルーファスさま狙いの姫君たちとに決まってます!」
サファイアとダイヤのイヤリングの位置を調整しつつ、クレオが意気込む。
「城で夜会が主催された時など、女性の招待客たちは、完全に獲物を狩る目になっておりました。みなさま必死ですよ」
「……」
生きて帰れるか、少々不安になってきた。
「剣を持った男が相手でしたら、ルーファスさまはカテリナさまを守ってくださるでしょうが、夜会では逆ですよ!」
馬車に乗り込むさいも、可愛らしい顔ながら、以外と男気溢れるクレオは、小声で熱弁した。
「カテリナさま!がんばってルーファスさまを他の姫さま達から守ってあげてくださいね!」