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Dreams
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Dreams-1

気付くと、僕はそこにいた。
白い空間のなかに、僕と、僕でない誰か。
何も無い空間の中で僕はただ、立ち尽くしていた。
ここはどこなのだろう。
君は誰なのだろう。
僕は何なのだろう。
白い壁が僕らを包み、世界を切り取っていた。
「君は、だれ?」
目の前の男は、僕の顔を確認すると、優しくその両手で僕を抱きしめた。それだけで僕は安心してしまった。怖がることはない、と白い壁が囁いた。
「さぁ、行こうか」
目の前の男は手を差し伸べた。その澄んだ両の眼に頷き、僕らは白い壁を抜け出した。

次の風景は空だった。
見廻せば一面の青のなか。僕たちは宙を旅していた。風を感じ、その音を聴き、雲を分けて。
眼下には広大な大地。緑と青の色彩を纏う地球という天体。
どこまでも自由に、僕らは空を駆けた。
「どこに行くの?」
尋ねた、その問いに彼は微笑んだ。
「分からない。けれど気持ちいいだろ?」
僕は目を閉じた
気持ちいいだろ?
もう一度、彼は言った。
鳥のように。
背中には透明の翼。
そう、僕らは鳥のように。


ガヤガヤ
何処からともなく話し声が聞こえ、僕は目を開けた。
「ホントかよ、それ」
あははは。
ある家の庭で、一つのテーブルを囲んでいる風景に出会った。沢山の人がいて、みんながみんな笑っている。その中心で、彼は幸せそうに周りを見渡している。それだけで僕は彼の人柄を好きになれた。
彼は僕の姿を見つけると、手招きをして言った。
「ほら、こっちにきて一緒に話そうよ」
緑の芝生の上を、数匹の犬がじゃれ合いながら走っていく。
幸せが、僕らの周りを走っていく。
あぁ、なんて素晴らしい世界なのだろう、と。
まるで作り物のように燦々と照りつける太陽を見上げて。
「なぁ」
誰でもない僕は言葉を紡ぐ。「次はどこに行くんだい?」
彼は笑った。「何処へでも行けるさ」
僕も笑った。「そうだね。何処へでも行ける」
僕には羽があり、君にはイマジンがある。
無限の可能性と、夢幻の可能性。
ここは何処にでもあり
ぼくは何処にもいない。
もう少しだけ、この世界を愉しもう。
彼はきっと、それを許してくれる。


移り変わった景色は、懐かしい香りをはらんでいた。
夏の夜空に向けて、子供の頃の彼が花火を放っている。
とても楽しそうに、沢山の子供たちと一緒に火花を散らしている。
その様子を、僕と彼は眺めている。
自分の少年時代を、彼は見ている。
僕には分からないけれど、それは彼にとって最も輝かしい時代だったのかもしれない。
少年を見据える彼の瞳を見て、僕はそう感じた。
時を経て失ってしまうものがある。
どこかの日常のなかに置き去りにした感覚がある。
決して取り戻すことができないからこそ、彼はこの世界の中でのみ顧みる。
僕は彼の肩を優しく叩いた。
「ごめん。君には関係の無い場所だね、ここは」彼は言った。
「別に。行きたい場所に行けばいいさ。ここは君の世界なんだから」
ふ、と彼は笑った。
セミの鳴き声が、生ぬるい風に震えていた。


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